菅田将暉と山田孝之の間に不穏な空気が流れる 『dele』が描いた“人間の裏の顔”

『dele』第7話は後味の悪い結末に

 今回の演出は、表の顔と裏の顔で印象がガラリと変わる、ある意味極端な演出だ。しかし、圭司と祐太郎が事件の真相に近づかなければ、その両面が表に出ることもなかった。表に出るはずのなかった裏の顔、それをそれとなく覆い隠そうとする空気を感じさせる演出だったからこそ、裏の顔が一切見えない表の顔すらも不気味に感じられる。

 笹本が死刑を執行された時、町では8年前から中止されていたバザーが再開される。このとき1人の少女が、8年前に見知らぬ人物から「ジュースを飲むと死んじゃうよ」と注意されていたことが判明する。その直後、圭司と祐太郎によって裏の顔が暴かれた市議会議員や飲食店経営者たちの表情が映し出されるが、彼らは一様に笑顔である。圭司の言う「裏の顔を暴かなければ、彼らは今までどおりの日常を過ごすことができる」ということの表れだ。ジュースを飲むことを拒否した少女に、ジュースを配布している主婦は「大丈夫よ」と彼女の肩を掴んで促す。このとき、少女の肩を掴む主婦の手に力が込められているところが映し出される。笹本が刑に処されることで、町は平穏を取り戻したのだと言わんばかりに。

 エンディングで、祐太郎は今回の一件に対して「気持ち悪い」と漏らした。今回の真相を探る中で、毒物混入事件で孫を失った人や自殺した依頼人が唯一心を開いていた人物に共鳴した祐太郎は、その目に優しい光が灯していた。しかし「気持ち悪い」と発し、「dele.LIFE」を出て行った祐太郎の目に映るものは空虚だった。どことなく絶望を感じさせる目にゾッとさせられる。圭司はその後、通常通りデータを削除するのだが、一瞬だけ削除を躊躇うような間を見せる。“y”まで打って、一度手を止めた圭司は何を思ったのだろうか。

 これまでも何度か後味の悪さを感じさせる演出はあったが、第7話は「デジタル遺品」という題材の重さを感じさせる回だった。デジタル遺品に遺された意思を、故人に問いただすことはできない。第7話の舞台となった町において、圭司や祐太郎は平穏をかき乱す“部外者”でしかなかった。事件の真相を掴もうとすればするほど、空ばかりつかまされるような演出が歯がゆかった。後味の悪い結末となった第7話で、圭司と祐太郎の間に流れるようになった不穏な空気は最終回にどう影響するのだろうか。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『dele(ディーリー)』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~深夜0:15放送(※一部地域を除く)
出演:山田孝之、菅田将暉、麻生久美子
原案・パイロット脚本:本多孝好
脚本:本多孝好、金城一紀、瀧本智行、青島武、渡辺雄介、徳永富彦
音楽: 岩崎太整、DJ MITSU THE BEATS
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)、瀧本智行
撮影:今村圭佑、榊原直記
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://dele.life/

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