菅田将暉の“共感力”と山田孝之の“優しさ” 『dele』互いを補完し合う最高のバディに

『dele』菅田×山田のバディぶりが絶妙

 他人に共鳴する祐太郎を、菅田はしなやかに演じる。祐太郎を演じる菅田の表情は素直で、他人の感情によってコロコロ変わるのが魅力的だ。相手が高圧的な態度を取れば、その態度に対応する。相手が助けを求めるような心情を見せれば、ぽっかり空いた穴を埋めるようにそっと寄り添う。相手が見せる感情に“共鳴”した表情を見せる菅田は、軽やかでいて頼もしい。

 いじめの主犯格にいた純子の同級生と接したときも、はじめは厳しい態度を見せたが、彼女自身が純子の死に傷ついていることを理解すると、最後には彼女を支えるような声をかけた。そんな祐太郎に彼女も安堵したのか、涙ながらに「純子の死の真相が分かったら教えてほしい」と告げた。いじめた側にもいじめられた側にも、親身になって話を聞き出すことができるのは、祐太郎しかいない。祐太郎がどんな相手にも素直に接するからこそ、彼女たちが抱える闇や傷を、浮き彫りにすることができるのだ。

 圭司は、そんな祐太郎を表情には出さないものの信頼しているようだ。祐太郎が困ることのないよう、さまざまな場面で彼を支えている。真相を探るため、学校に向かおうとする祐太郎に、言葉では「住所知らないだろ」と突っぱねながらも、携帯を通じて住所を教える。同級生の名前を調べ忘れた祐太郎のために、先回りして学校のホームページをハッキングし、名前を突き止める。表情は常に硬く、眉間にしわを寄せながら話す圭司だが、第1話で見せた他人を遠退けるような雰囲気は見当たらない。自分にはない能力をもった祐太郎を信頼し、彼が行動しやすいようにサポートしている印象だ。

 圭司のこの優しさは、彼の根底の部分を表している。祐太郎と共にいじめられていた少女の元へ訪れたとき、「生きるのが怖い」と自殺しようとした彼女を思い留まらせたのは、祐太郎の言葉ではなく圭司の言葉だった。1度屋上から落ちかけたときに手すりを掴んだ彼女の行動を、いつものように淡々と指摘する圭司だったが、「やり残したことがあるからだろ」「死ぬのはそれからでもいい(やり残したことをやったあとでもいい)」と彼女に訴える。

「とりあえず俺たちが解決してやるから」「俺たちを信じろ」

 この台詞は、彼女の心に寄り添った圭司の優しさに溢れる台詞だ。

 それと同時に、圭司がはっきりと「俺たち」と告げたことで、祐太郎のことをバディとして信頼していることを表す台詞でもある。圭司がこの言葉を発したあと、祐太郎は圭司のほうへ振り向く。これは圭司が少女を引き止めたことを驚いているだけでなく、彼の自分への信頼を感じとったからなのではないだろうか。

 結局、死の真相は自殺だった。友人や家族の裏の顔を知り、傷つき、自殺を選んだ純子の意思を汲み取った圭司と祐太郎は、復元したデータを削除することに決める。純子の周辺に漂っていた闇のすべてが解決したわけではないが、故人の意思を尊重し“削除”を選ぶ描写には、胸に刺さるものがあった。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『dele(ディーリー)』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~深夜0:15放送(※一部地域を除く)
出演:山田孝之、菅田将暉、麻生久美子
原案・パイロット脚本:本多孝好
脚本:本多孝好、金城一紀、瀧本智行、青島武、渡辺雄介、徳永富彦
音楽: 岩崎太整、DJ MITSU THE BEATS
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)、瀧本智行
撮影:今村圭佑、榊原直記
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://dele.life/

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