『劇場版コード・ブルー』山下智久ら5人が続ける、“家族との対話”の終わりなき追求

『コード・ブルー』5人が探るあるべき姿

 未知が残された人生で行ったこと、そしてその後に待ち受ける衝撃的な結末。ただ、この未知のエピソードでは、未知本人はもとより、フィアンセだった彰生の存在も重要なパートを占める。先述の通り、医者・看護師はまず患者の命の対処に全力を尽くすべきであるが、同時にいかに近しい人間たちとの関わりにも向き合うことの重要さを教えてくれる本作。『コード・ブルー』シリーズは病気を治す上での専門的な困難にスポットを当てる作品(直近で言えば『ブラックペアン』(TBS系)など)というより、患者とその周りの人々の繋がりに重きを置いている。

 劇場版では、そのもう一つの具体例として、作中では海ほたるの事故で、鉄の棒が体に突き刺さってしまった男性が登場する。その救命にあたるのが、藍沢(山下智久)と白石(新垣結衣)なのであるが、その時男性のすぐ側には、家族と思しき青年・杉原剛志(平埜生成)の姿があった。剛志はかつてその男性に虐待を受けていた息子だったということを、藍沢は事故現場で本人から知る。そこでも、“家族とのつながり”にスポットを当てた演出がなされる。ただ、未知のときも、剛志のときにも共通しているのは、“こうしなければいけない”ということを藍沢たちの側から押し付けるようなことはしないのだ。最後は患者自身に、どこに向かうべきかを気づかせる手助けまでが藍沢たちの仕事であって、最後は人生の当事者たちに寄り添うのみであるということ。断定形に走り過ぎない語り口。これこそが『コード・ブルー』が示す医者・看護師たちのあるべき姿の真髄であるように思われる。

 藍沢たちは、間違いなく救命という仕事を通じて多くのことを学んで、成長していったことは言うまでもない。ただ、恐らく患者とその家族への向き合い方の“正解”にはたどり着くことがないように思われる、というよりも、“正解”なんていうものはないのだろう。劇場版では、脳死状態の患者の遺族に、正確にはどのような言葉をかけるべきだったのかという灰谷(成田凌)の質問に対し、橘(椎名桔平)は「分からんよ」と答える。橘ほどのベテランにとっても、常に患者と家族に対する向き合い方は模索段階なのである。今後、藍沢たちもまた様々な患者に出会っていくと思われるが、試行錯誤の連続をこれからも繰り返していくのであろう。

 劇場版のエンディングでは、藍沢ら主要メンバー5人がヘリポートの付近でその結束を確かめ合うところが描かれた。言葉を交わさなくとも、通じ合える可能性を秘めた特別な5人の関係性。5人それぞれが個性的なキャラクターを持っていることは言うまでもなく、相互補完的に振る舞うことで、見事にチームワークを発揮してきた。完璧すぎる医者の快刀乱麻ぶりを描く作品もそれはそれで観ていて興奮するものであるが、『劇場版コード・ブルー』は答えのない医者・看護師の姿を模索し続ける作品の奥深さを教えてくれた作品であった。

(文=國重駿平)

■公開情報
『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』
全国東宝系にて公開中
出演:山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、成田凌、新木優子、馬場ふみか、新田真剣佑、かたせ梨乃、山谷花純、丸山智己、杉本哲太、安藤政信、椎名桔平
監督:西浦正記
脚本:安達奈緒子
音楽:佐藤直紀
プロデュース:増本淳
主題歌:Mr.Children「HANABI」(TOY’S FACTORY)
配給:東宝
(c)2018「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」製作委員会
公式サイト:http://www.codeblue-movie.com/

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