大内雷電の『ハン・ソロ』評:特撮オタクが見た『スター・ウォーズ』の未来と可能性
愛した女性を巡るハンとランドの闘い
旧三部作にも登場するハンの悪友ランドは、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』で、クラウド・シティにやってきたハンをいとも簡単に裏切る。ランドがハンを快く招き入れたのは、帝国軍と手を組んで、ルークを誘い出すための罠に過ぎなかった。
当初はランドが卑怯者のように思えたが、本作で明かされた2人の女性を巡る争いを考えれば、『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』での一件も頷けるものに変わる。ハンの愛船ミレニアム・ファルコンは、ランドから手に入れたものだというのは言うまでもないが、そのファルコンにはランドの愛した「女性」の一部も埋め込まれていたのだ。
その女性というのがランドの相棒だった女性型ドロイドL3-37。彼女は始めこそ自意識過剰な性格に見受けられたが、銃撃戦のシーンでランドが決死の思いで彼女を救い出そうとする様子を見れば、2人の間に深い愛情が芽生えているのを想像するのは容易い。残念ながら闘いの末、無残な姿と化したL3だったが、彼女が持つ銀河一のナビゲーションシステムをファルコンが受け継ぐ熱い展開が繰り広げられる。1977年から登場する旧式機であるファルコンが、続三部作まで銀河最速を誇る理由が、ここでわかりやすく明かされたのである。
しかし、自分の愛した女性の一部が生きている宇宙船を奪われたランドを思うと、ハンの行動は非常に残酷だ。ただ、事の発端を考えれば、ハンも愛したキーラをランドに寝取られてる(と思える描写がある)わけで、ファルコンの強奪はキーラと関係を持ったランドへの一種の復讐のようにも見える。
『帝国の逆襲』でランドがファルコンに乗るシーンがあったが、あれは昔持っていた船に乗るというだけでなく、かつての恋人との再会し、そして彼女と共に闘った場面でもあったと思うとさらに感慨深い。
また、様々なところで言及されているが、ランドとL3がハイパースペースに入る際に送ったハンドサインは、『ジェダイの帰還』と同じもの。つまり、ハンに向けてではなくL3へのサインだったのだろう。だとしたら『ジェダイの帰還』でクラウド・シティにいたランドは、ファルコンすなわちL3を歓迎しただけで、ハンのことは招き入れてなかったのかもしれない。