『詩季織々』生きているような“ビーフン”はどう描かれた? コミックス・ウェーブ・フィルムを訪問
作画監督の仕事とは?
アニメーションの制作工程は、シナリオからコンテを作成し、そこからレイアウト作業を経て、原画や動画といった“動く絵”を描くセクション、背景や3Dによる効果を付けるセクション、それらを全て合わせて撮影するセクションなどに大きく分けられている。コミックス・ウェーブ・フィルムは、原画や動画などの手描きの作業をするスタジオと、背景や3Dや撮影を行うスタジオの2スタジオ体制で制作を行なっている。
今回、話を伺った西村貴世は、コンテをもとに1からキャラクターのディティールを作り上げていくキャラクターデザインと、その絵の整合性を取っていく作画監督を担当している。アニメーションの絵は複数人で描いていくため、作画監督がチェックすることで、はじめて全体の絵の整合性が取れるのである。
西村は、作画監督という仕事について、「原画を描くときと使う脳みそが全然違います。全体の仕上がりを想像しながら、スタッフの方々の描く絵の方向性をチェックしていく作業で、時間に制約がある中で進めていくため、どのシーンに力を注ぐべきかなど、あらゆる方面に気を配る必要があります。私は『秒速5センチメートル』で初めて作画監督を経験したのですが、その時は力の配分がわからず、すべてのシーンで過剰に力んでしまった記憶があります(笑)。今回は、日常を静かに、そしてリアルに描くことで、観た方に『自然なものを見た』と感じていただけるように、丁寧な仕事を心がけました」と語っている。
スタジオ内では、20人程度のスタッフがデスクに向かい、それぞれ動画や彩色の作業を行なっていた。ベテランのアニメーターも多く、職人たちによる仕事にリスペクトを示す同社の姿勢が伺えるようだった。世界に通用するコミックス・ウェーブ・フィルムの作品は、こうした現場から生まれているのだ。次回、後編では、コミックス・ウェーブ・フィルム作品の大きなポイントである“背景”を生み出す制作過程をレポートする。
(取材・文=松田広宣)
■公開情報
『詩季織々』
8月4日(土)、テアトル新宿、シネ・リーブル池袋ほか公開
主題歌:ビッケブランカ「WALK」(avex trax)
配給:東京テアトル
2018年/日本/カラー
(c)「詩季織々」フィルムパートナーズ
公式サイト:http://shikioriori.jp/
『陽だまりの朝食』
監督:イシャオシン
作画監督:西村貴世
音楽:sakai asuka
キャスト:坂泰斗、伊瀬茉莉也
『小さなファッションショー』
監督:竹内良貴
作画監督:大橋実
音楽:yuma yamaguchi
キャスト:寿美菜子、白石晴香、安元洋貴
『上海恋』
監督:リ・ハオリン
作画監督:土屋堅一
音楽:石塚玲依
キャスト:大塚剛央、長谷川育美