『レディ・プレイヤー1』はスピルバーグ監督の遺言のよう? 最後のメッセージに込められた“本音”

松江哲明の『レディ・プレイヤー1』評

 それにしても、昨年公開されて大ヒットを記録した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』や、Netflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス』など、80年代のカルチャーが改めて注目を集めているなと感じます。本作のポスタービジュアルも完全に80年代のテイスト。僕らの世代にとっては、スピルバーグ作品をはじめ、思春期を過ごした思い入れのある作品が詰まっている時代なだけに親しみがあるのは当然なのですが、今の10代・20代の若い世代にもすごく響いているのが意外です。

 80年代がこれだけ人を惹き付けているのは、“懐かしい”と誰もが感じられる最後の時代だからかもしれません。90年代からインターネットと携帯電話の登場で人々の生活スタイルは大きく変化しました。でも、70年代から80年代、80年代から90年代に比べて、この20年間はほとんど大きな変化がありません。今から10年前にタイムスリップしても、すぐには気づけないような気がします。誰もがスマホ等で瞬時に情報を得られるようになったことは大きな変換点と言える一方で、新しいモノが生み出されている感じがしないんです。これからはデータやソフトは増えるでしょうが、形のあるハードは縮小再生産されていくのは間違いないと思います。『レディ・プレイヤー1』が描いた2045年の世界のように、このまま停滞する未来が待っているかもしれないな、とスクリーンを観ながら考えました。

(構成=石井達也)

■松江哲明
1977年、東京生まれの“ドキュメンタリー監督”。99年、日本映画学校卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が文化庁優秀映画賞などを受賞。その後、『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』など話題作を次々と発表。ミュージシャン前野健太を撮影した2作品『ライブテープ』『トーキョードリフター』や高次脳機能障害を負ったディジュリドゥ奏者、GOMAを描いたドキュメンタリー映画『フラッシュバックメモリーズ3D』も高い評価を得る。2015年にはテレビ東京系ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』、2017年には『山田孝之のカンヌ映画祭』の監督を山下敦弘とともに務める。最新作は山下敦弘と共同監督を務めた『映画 山田孝之3D』。

■公開情報
『レディ・プレイヤー1』
全国公開中
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ザック・ペン
原作:アーネスト・クライン著『ゲームウォーズ』(SB文庫)
出演:タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、マーク・ライランス、サイモン・ペッグ、T・J・ミラー、ベン・メンデルソーン、森崎ウィン
配給:ワーナー・ブラザース
(c)2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/

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