『13の理由』脚本家から悩める若者へメッセージ 「この作品が人生のリハーサルになれば」

『13の理由』脚本家インタビュー

 Netflixオリジナルドラマ『13の理由』シーズン2が5月18日から配信される。自殺したハンナ・ベイカー(キャサリン・ラングフォード)から届いた7本のカセットテープを頼りに、クレイ・ジェンセン(ディラン・ミネット)が彼女の人生を辿っていく様子が描かれたシーズン1。シーズン2では、不気味なポラロイドをカギに物語が進められていく。

 今回リアルサウンド映画部では、脚本を手掛け、エグゼクティブ・プロデューサーも務めたブライアン・ヨーキーにインタビュー。本作が訴えたリアルな10代の痛みについてや、悩みを抱える子供と彼らを見守る大人に一体何ができるのかなどを聞いてきた。

「見るに耐えないシーンがたくさんあったと思う」

ーー今年に入って配信当初にはなかった警告メッセージ動画が冒頭に流れるようになりましたが、どんな経緯で作られたのでしょうか?

ブライアン・ヨーキー(以下、ヨーキー):いつ決まったかははっきりと覚えていないんだけれど、物語が後半へ突入するに連れて、目を背けたくなるシーンがたくさん出てくるようになるよね。実際に経験した人たちにとってはとても辛い作品になるかもしれないと思って、観る側が選択できるようにプロデューサーたちとNetflixで動画の製作を決めたんだ。

ーー物議を醸すほど過激な演出でしたが、なぜあえてその手法を?

ヨーキー:大胆かつリアルに描いたことで、見るに耐えないシーンがたくさんあったと思う。でも、こういうことは実際に起きているわけだから、僕たちはできるだけオープンに正直に物語ろうと決めていたんだ。鑑賞するのは辛かったろうけど、作る方も辛かったよ。それでも実際に経験した人たちの気持ちを考えたら、それは僕たちと比較にならないくらい辛いことだと思った。そういう意味を込めて、痛みのリアリティーを追求していったんだ。

ーー撮影現場にはセラピー犬がいたと聞いているのですが、重い題材を扱うにあたってキャストへの配慮もされたのですか?

ヨーキー:ブライス(ジャスティン・プレンティス)がハンナを襲うシーンは、本当に辛いシーンだった。セラピー犬がいることで2人の役者にとって癒やしになると思っていたんだよ。でも実は、大勢いるスタッフの中でもエンジニアたちが一番犬を抱きしめていたね(笑)。

ーー製作総指揮にセレーナ・ゴメスが参加していましたが、彼女がいたことでこのドラマが若い人により刺さる作品になったように思います。

ヨーキー:セレーナは自分のファンに対して物凄く敬意を払う人なんだ。それに面倒見もとても良い。この物語は若者たちにとって重要になるということを彼女に伝えてきた。セレーナ自身も難病ループスの影響で鬱や不安障害を抱えていたから、“会話をすること”の大切さをよくわかっていたよ。彼女の情熱がみんなに伝染していってこの作品が出来上がっていったね。

ーー『13の理由』にはたくさんパーティーのシーンが出てきます。日本人にはなじみの浅い文化なのですが、アメリカの高校生にとってパーティーはどんな存在なのですか?

ヨーキー:高校生はパーティーをしょっちゅうするんだ。でも場所によって変わるよ。都会に住んでいる人たちは遊び場がいっぱいあるからそんなにパーティーはしないのだけれど、郊外に住んでいるとやることがないから、とにかく親がいない家に集まってアルコールを飲むのが普通なんだ。

ーー昔と違って今の子供たちはインターネットで24時間繋がっているので、学校を忘れられる“放課後”という概念を失いつつあるのではないかと思っています。

ヨーキー:今の若い人たちは、何においてもあまりにもペースが早すぎると思うよ。高校時代は特に、遊ぶ時間も重要になってくるのにね。僕が学生の頃は、ただただのんびりと、好きな仲間と集まって、ピザを食べて気分転換をしていた。日本で言うジャンクフードはなんだろう……キットカットかな!?(笑)。現代に生きるティーンエイジャーもスマートフォンの電源を切って、こういう時間を持てたら良いのになと思うよ。

ーー高校生の頃は些細なことでも悩みの種になりますが、『13の理由』はそんな彼らにどんな作用をもたらそうとしたのでしょうか?

ヨーキー:10代の頃はすべてに対して、この世の終わりだって考えてしまいがちだ。僕たちがいくら否定しても、彼らは信じてくれない。だけど、この番組を観ることによって、他人の生活や選択の方法を体験することができる。クレイやハンナへの感情移入が、高校生にとって人生のリハーサルになってくれたらいいなと願ったんだ。

『13の理由』シーズン2フォトギャラリー
破壊されているトニーのマスタング
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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ーー続くシーズン2がどんな展開を見せるのか、気になって仕方ありません(笑)。

ヨーキー:重要な点は2つ。1つ目はハンナが語ったカセットテープに吹き込んだストーリーには、語られた側の説明があるはずだということ。その側面をもっと知りたいと思ったんだ。2つ目はそれぞれのキャラクターに痛みや傷が生まれていること。それをどう癒やしていくかを見せたかった。シーズン1であのまま終わってしまうのは忍びなくて、彼らに少しの喜びや楽しさがあっていいと思ったんだよ(笑)。

ーー例えハンナを傷つけた人物であっても、キャラクターそれぞれに自分と共感できるポイントがあったことが驚きでした。

ヨーキー:とても良いことだよ。僕以外に脚本家が何人もいて、それぞれが意見を出し合い、体験を語り合って書き上げていったんだ。だから色んな視点が混ざっているんだよ。それから、全キャラクターに必ず外見からは分からない隠し事を持たせた。内側はどんな風になっているのか探っていく作業をしたんだ。

ーーあなたの経験もストーリーに組み込まれているのですか?

ヨーキー:僕!?(笑)。色んなスタッフの経験が混じっているんだけど、僕の体験はシーズン1の第5話の最後の部分にあるよ。クレイが母親からハンナについて追及されるシーンがあるけれど、本当は恋をしていたのに「知らない子だ」と答える。その後、打ち明けられなかったことをシャワーの中で泣くけれど、そこは僕がちょっと経験したところだったね。

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