『99.9』や『アンナチュラル』にみる、「チーム」で活躍の傾向 2018年1月期ドラマを振り返る

『anone』の不振、坂元裕二の退場

『anone』(c)日本テレビ

 その意味で、少し気掛かりなのは、放送前の高い期待値や注目度とは裏腹に、平均視聴率6.16%と振るわなかった『anone』(日本テレビ系)の存在だ。ちょうど1年前に高評価を得た『カルテット』(TBS系)の脚本家・坂元裕二の最新作であり、人気若手女優・広瀬すず10代最後の主演ドラマであること、さらに坂元裕二×日テレの連続ドラマとしては、2010年の『Mother』、2013年の『Woman』の流れを汲む作品であることなどから、かなり注目度の高かった本作。

 しかし、結果的には『Woman』の13.58%、『Mother』の12.95%の約半分の数字、『カルテット』の8.90%にも及ばない平均視聴率に終わってしまった。広瀬すずをはじめとする出演者たちの好演や、「ホンモノよりも強いニセモノの絆」というテーマ性、周到に編まれた細やかな台詞や丁寧に演出された画面作りなど、評価すべき点も多い作品ではあったものの、「わかりやすさ」や「連続性」という意味では、やや難しいところがあったことは否めない。脚本家やテレビ局が描きたいことと多くの視聴者が求めることに、何かズレのようなものが生じていたのではなかったか。

 それ以上に気掛かりなのは、ドラマの放送直後、坂元裕二自身がInstagramで、しばらく連続ドラマの世界から離れることを発表したことだった。その真意の程は不明だが、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)、『カルテット』、そして今回の『anone』と、4年連続して1月期の連続ドラマの脚本を手掛けてきた坂元裕二の新作が、しばらくのあいだ、連続ドラマという形で観ることができないのは、非常に寂しい限りである。

 20%を超えるドラマが続出した時代は、もはや遥か昔のこと。2桁をとることすら簡単ではないどころか、「テレビ離れ」「ドラマ離れ」といった声が、まことしやかに語られている昨今の状況にあって、地上波連続ドラマが描くべきこと、あるいはそこに求められているものとは、果たして何なのだろうか。引き続き、4月以降の連続ドラマに注目していきたい。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。編集部での愛称は麦っさん。Twtter

■ドラマ情報
金曜ドラマ『アンナチュラル』
出演:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、池田鉄洋、竜星涼、小笠原海(超特急)、飯尾和樹(ずん)、北村有起哉、大倉孝二、薬師丸ひろ子(特別出演)、松重豊ほか
脚本:野木亜紀子
プロデューサー:新井順子(ドリマックス・テレビジョン)、植田博樹
演出:塚原あゆ子(ドリマックス・テレビジョン)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/unnatural2018/

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