石原さとみが尾上寛之に突きつけた怒りの理由とは? 『アンナチュラル』納得の結末を振り返る
そんな個人的な「感情」は、殺人を犯すという真実を前にして、まったく無意味であることも、きちんとドラマでは描いていた。ミコトは、法廷の場では、真実を明らかにすることのみが重要なのであって、「感情」は真実の前では無関係であると知っている。にも関わらず、第3話では「感情」を引き出されたことによって、一度は真実を自分の手で暴けなくなってしまった。だからこそ、第10話の法廷では、その「感情」によって犯人を煽ったのだ。これは、いわば「報復」でもある。ただ、単なる「報復」は無意味である。その「感情」を引き出すことで、個人的な「感情」は真実を前にしては無意味であり、犯罪を繰り替えすことの理由にはならないということを強く証明した。
ミコトは、自らの恋人の死に関わっている記者の宍戸(北村有起哉)に毒を飲ませた中堂に対し、「不条理な事件に巻き込まれた人間が、自分の人生を手放して、同じように不条理なことをしてしまったら、負けなんじゃないですか」と語る。不幸な事件に巻き込まれた人が、その後をどのように生きるべきなのか、ミコト、中堂、高瀬によって、その道がしっかりと描かれていた。そして、今また思い出すのは、第2話で六郎が言った「三澄さんは絶望とかしないのかな」という言葉とミコトが返した「絶望してる暇があったらうまいもん食べて寝るかな」という言葉である。第10話の終わり、第1話と同じように、ミコトはもくもくと天丼を食べる。UDIラボの日常は続いていくのだ。
■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。
■放送情報
金曜ドラマ『アンナチュラル』
TBS系にて、毎週金曜22:00~
出演:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、池田鉄洋、竜星涼、小笠原海(超特急)、飯尾和樹(ずん)、北村有起哉、大倉孝二、薬師丸ひろ子(特別出演)、松重豊ほか
脚本:野木亜紀子
プロデューサー:新井順子(ドリマックス・テレビジョン)、植田博樹
演出:塚原あゆ子(ドリマックス・テレビジョン)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/unnatural2018/