『金田一少年』や足利事件の要素も 『99.9』第8話に隠された“小ネタ以外”の面白み
選挙事務所に届けられた羊羹を食べた議員の妻が重症になり、第一秘書が亡くなる。羊羹から検出された毒物と同じ成分の毒物を保有しており、羊羹の送り主でもあるメッキ会社の社長・西川五郎(おかやまはじめ)が逮捕され、起訴されるところから始まる3月11日放送の『99.9-刑事専門弁護士- SEASON II』第8話。最終回前の重要エピソードとなる今回は、今シーズンの中でもっとも“推理ドラマ”色の強いエピソードとなった。
木箱に入った5個入りの羊羹の中からどれが選ばれるのか、そしてそれが4つに切り分けられた中から誰がどの部分を食べるのか。それを誘導することができる人物がおらず、無差別殺人の可能性が高い。それでも、死亡した秘書を殺害する動機を唯一持っていた議員の藤堂正彦(佐野史郎)の犯行だと証明するためには、どういう方法で毒入り羊羹を食べさせたのかというトリックを解明しなくてはならないのだ。
羊羹から出た毒の成分が、被告・西川の会社が所有しているものと微妙に違うことを明らかにし、藤堂の異母兄弟が経営する会社のものだというところまでたどり着いた深山大翔(松本潤)。さらに藤堂が愛人に同じ羊羹を買わせていたことなどあらゆる状況証拠を固めていくが、裁判官の川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)の巧みな話術によって証言があやふやなものとなり、西川はあえなく無期懲役の判断が下されてしまう。
今回のエピソードでは判決の後にすべてを覆すという、これまでになかったタイプの展開が待ち受けていた。というのも、川上らが“あらかじめ決められた判決”に導くという描写が、最終回に向けての重要なファクターとなるからに違いないだろう。裁判員たちの評議の場面で川上は、鑑定の結果について論じようとする裁判員たちを誘導。法律の知識が乏しい一般人が参加する裁判員裁判で、もっとも危惧される状態が描き出されていたのは見逃せない。
閑話休題、深山は羊羹ではなく、それを食べるための爪楊枝に毒が染み込ませてあったことに気がつく。しかも重症になった議員の妻も共犯で、疑われぬために致死量に満たない量の毒が塗り込まれた爪楊枝を使ったという体を張った犯行だったのだ。食べ物ではなく、それを食べるためのツールに毒が潜まれていたというのは、どことなく漫画『金田一少年の事件簿』の「銀幕の殺人鬼」での紙コップのトリックを想起させられてしまった。