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『ゆれる人魚』監督が語る、人魚と初恋の関係性 「人魚だからこそ表せる人間の心理」

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 作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる童話『人魚姫』を基に、アグニェシュカ・スモチンスカ監督が手がけたファンタジー・ホラー『ゆれる人魚』が現在公開中だ。2016年サンダンス映画祭ワールドシネマコンペティションドラマ部門審査員特別賞をはじめ、世界各国で数々の賞を受賞している本作は、共産主義時代下であった1980年代のポーランドを舞台に、人間を捕食しながら生きるふたりの人魚姉妹が、少女から大人へと成長していく模様を描く。

 リアルサウンド映画部では、本作で長編デビューを果たしたスモチンスカ監督にインタビュー。監督自身の経験も多く反映されているという本作の主人公が、なぜ“人魚”である必要があったのか、その理由に迫った。

「人魚は、“大人でも子供でもない少女たち”のメタファー」 

――本作は色彩をはじめ映像が美しく、独特な雰囲気が漂っており、まさに“大人のおとぎ話”でした。特に水や泡の使い方が綺麗で印象的です。映像で特に意識したことを教えてください。

アグニェシュカ・スモチンスカ(以下、スモチンスカ):アレクサンドラ・ヴァリシェフスカというポーランドの画家の作品からインスピレーションを受けています。彼女にモダンな人魚の絵をお願いしたら、下半身がしっかりとした人魚を描いてくれたんです。その絵は、映画のオープニングの部分で使用しています。また、人魚の絵ではないのですが、彼女が描いた絵の中で、青と緑と黄の色合いがとても印象的な作品があります。撮影監督をはじめ、衣装、美術、ビジュアルを担っているチームに見せて、それを基に映画全体のビジュアルを作っていきました。なので、彼女の絵は本作にとってキーポイントです。あと、作品的にすごく大切だったのが、冷酷もしくは残酷なものとイノセンスを並列して描くことでした。これは物語においてだけでなく、ビジュアルにおいても然りです。そもそも人魚という生き物はハイブリッドですよね。半分が人間の少女、半分がモンスター(魚)で、異なる生物が共存しています。視覚的にも物語的にもその趣旨を見せるというのが重要なポイントでした。

――かねてから、アレクサンドラ・ヴァリシェフスカさんの絵が好きだったのですか?

スモチンスカ:もともとは彼女のことを知りませんでした。彼女の作品を初めて目にしたのは、友達から教えてもらい、個展に足を運んだ時です。人魚は全く描かれていなかったのですが、彼女の作品からはダークな少女性とホラー要素を強く感じました。それがとても印象的で心惹かれたんです。でも、とてもシャイなアーティストであるため、実は映画の制作中には一度も会えていないんですよ(笑)。なので、やりとりは全てメールでしていました。

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――もともと本作は、音楽を手がけたヴロンスカ姉妹についての伝記として作られるはずだったということですが、なぜ人魚を題材にしたミュージカル映画になったのでしょうか?

スモチンスカ:まずヴロンスカ姉妹の伝記という話があったのですが、実は妹のバルバラから「自分の個人的なことをそこまで見せるのは嫌だから、伝記にしたくない」と言われて、企画が止まりそうになったんです。そこで、彼女たちの友人であった脚本家のロベルト・ボレストが、「ヴロンスカ姉妹を人魚に変えよう」というアイデアを出してくれました。最初にそれを聞いた時は成立するのかな?と不安に思ったのですが、それと同時に、下半身がアシカの皮膚でできている女性の物語や、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『人魚姫』を思い出したんです。そして、“大人にまだなりきっていないけど、子供でもない少女たち”のメタファーとして人魚を用いることは、パーフェクトなのではないかと感じました。ただ私たちは、人魚を幼児化して、スイートでナイーブな面だけを描くような物語にはしたくありませんでした。もっと刺激的でビターな世界観を創造していきたかったのです。

――なぜ、人魚が“大人でも子供でもない少女たち”のメタファーだと?

スモチンスカ:人魚という存在自体が、私たちが思春期に感じる“何か”を表現してくれていると思ったからです。全く同じではないけれども、非常によく似た、誰しもが共通して持っている経験ってありますよね。人魚は、おとぎ話や神話の中でのみ存在する架空の生物です。そういった曖昧で不確かなもの、幻という意味合いも含めて、人魚を見ていると、ふわふわとしているけど強烈な、あの頃の記憶を思い起こさせてくれるのではないかなと。男性もそうなのかは分からないですけどね。どうですか? そういう風に思いますか?

――この作品を観たときに、私は人魚ではなく人間なのに、なぜこんなに姉のシルバーに感情移入できるのだろう?と不思議に思っていました。

スモチンスカ:それは嬉しい。私がこの作品でもう一つ描きたかったことは、うまくいかない恋愛です。そのときどんなことを感じ、どう対処していくのか、そういった部分には誰もが感情移入できるはずです。シルバーからは“本物の感情”を感じます。同時に、恋愛したときの感情は動物的なものでもあるということを、彼女を通して表現したかったのです。人魚という存在をただのアイテムとして扱うのではなく、人間でもなく動物(魚)でもない、どちらでもない生物だからこそ見せられる人間の心理、本能的な部分を描きたかったのです。

      

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