全員嘘つきのラブバトル 海外ドラマ『インポスターズ 愛しの結婚詐欺師』が描く、複数の恋のかたち

『インポスターズ』が描く、複数の恋のかたち

 最後に忘れてはならないのが、『パルプ・フィクション』、『キル・ビル』のユマ・サーマンである。必殺仕置き人のような役割を担って登場する、包丁を片手に微笑む冷徹な彼女は、それだけで身の毛がよだつ。印象的な場面がある。夜道を歩く彼女の前に、突然スーパーマンのような格好をした男の子が「ハンマーマン」と名乗って現われる。「悪い子は正義のハンマーで叩く。いい子? 悪い子?」と問いかける彼に、「私は善でも悪でもない。私は私よ」と彼女は答える。

 それは、冷徹極まりない、情が一切通じない彼女のキャラクターを強調する台詞ではあるが、このドラマを象徴する言葉であるとも感じた。彼らは、善でも悪でもない。詐欺師マディも、本当にそんな人物がいたら、そのやり口は自殺者が出るぐらいの悪さだろう。だが、彼女もまた善でも悪でもなく、時には仕事以外に感情を乱され自分の人生を生きたいと思う「私は私」なのだ。そして愛する人のために善悪の境界を越えようとする登場人物たちもまた同じである。

 さて、この世紀の騙しあいバトル。何が真実なのかは最後までわかりそうにないが、面白いのは確かだろう。ロマンスとサスペンス、コメディ、どれも楽しみたい人にオススメのドラマだ。

『インポスターズ 愛しの結婚詐欺師』予告編

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■配信情報
Huluプレミア『インポスターズ 愛しの結婚詐欺師』
Huluにて1月25日(木)独占配信開始
(c)2017 Universal Cable Productions LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://www.happyon.jp/imposters

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