「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『リベンジgirl』『勝手にふるえてろ』

編集部の週末オススメ映画(12月23日~)

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

『リベンジgirl』

 見た目はおじさんだけど中身は少女! そんなリアルサウンド映画部の松田(35歳/独身)がおすすめするのは『リベンジgirl』。

 『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』の三木康一郎監督がメガホンを取り、今をときめく桐谷美玲が主演、劇団EXILEの注目株である鈴木伸之が相手役ということで、「よし、久しぶりに胸キュンでもするか!」と期待して試写を鑑賞したのですが、あらゆる意味で予想を覆す展開の数々に、胸キュンどころか魂を削られるような思いをしました。「クリスマスに贈る、この冬、最高のラブストーリー誕生!」というゆるふわなキャッチコピーに油断してはいけません。あくまで主観ですが、本作は観客の心理を巧妙に騙すタイプの映画と思います。

 話の筋はこうです。桐谷美玲演じる宝石美輝は、東京大学主席卒業で元ミス・オブ・ミスキャンパス・グランプリ、そして彼氏は政治家一家の御曹司というパーフェクトガール。でも性格は最悪の一言で、自分以外の女性は全員、身分の低い醜婦だと考えています。ほとんどサイコパスと言って良いでしょう。一方の彼氏、斎藤裕雅(清原翔)もまた政界のプリンスとは名ばかりの極悪マンで、何十人という女性と同時に交際し、妊娠させては金で解決するという、男の風上にも置けないクズです。そんなふたりの恋愛はそもそも最初から破綻しているのですが、裕雅にとっての自分が、何十人と囲っている女性のひとりに過ぎなかったと知った美輝は、復讐心をたぎらせて裕雅と同じ選挙区から出馬することを決意します。

 いったいどんな話なのか、この説明では釈然としない方も多いでしょう。でも、本当にそういう話なのです。桐谷美玲は相変わらずおしゃれで可憐で素敵なのですが、果敢に性格ブスな主人公を演じていて、胸がざわざわします。美輝が大勢の聴衆の前で、誰にも頼まれていないのに「総理大臣を目指します!」と宣言するときのヤバさといったらもう、目も当てられません。おそらく、桐谷美玲が演じていなければ、恋愛映画史上最悪の珍ヒロインとして名を残していた可能性もあるでしょう。正気の沙汰ではありません。

 美輝に比べると、鈴木伸之演じる門脇俊也はかなりまともです。彼の導きによって、美輝は少しづつ人間らしい真心を育むようになり、ようやく恋愛映画らしい流れになっていきます。とはいえ、冒頭30分にわたって繰り広げられる狂人たちのアンサンブルで心を攻撃された後なので、「こいつは本当にまともなのだろうか?」と疑ってしまいます。だって門脇、怒るときの目が本気すぎて怖いんですもの。ぶっきらぼうだけど本当は心優しい好青年という設定ですが、『あなたのことはそれほど』の有島光軌(クズ)のイメージもあってか、なかなか心を許す気になれません。

 さて、ここまでの説明でもやはり釈然とはしないでしょうが、少なくとも「とにかく普通の恋愛映画ではない」ということは、おわかりいただけたのではないでしょうか。本当に、変な映画なんです。とはいえ、面白いかどうかという基準で言えば、この映画はかなり面白い! 桐谷美玲と鈴木伸之の凸凹コンビぶりも愉快で、変な人たちだなと思いつつも、いつしかすっかり応援モードになってしまいます。最後には、狐につままれたような気持ちになるどんでん返しも用意されているので、変わった映画が好きな方はぜひ劇場でその顛末を確認してみてください。

■公開情報
『リベンジgirl』
12月23日(土)全国ロードショー
監督:三木康一郎
出演:桐谷美玲、鈴木伸之、清原翔、馬場ふみか、佐津川愛美、大和田伸也
原作:清智英・吉田恵里香『リベンジgirl』
脚本監修:吉田恵里香
脚本:おかざきさとこ
製作幹事:ギャガ/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(c)2017 「リベンジgirl」製作委員会
公式サイト:http://revengegirl-movie.jp/

『勝手にふるえてろ』

 わりと雪に強い地方出身なのに朝起きると寒くてふるえてます。そんなリアルサウンド映画部のピュアガール担当・大和田がおすすめするのは『勝手にふるえてろ』。

 今をときめく女優・松岡茉優さんが初主演と聞いて、発表された時点で、絶対みようと意気込んでいた本作、想像以上に楽しめた作品でした。綿谷りささんが手がけた原作の読者からは「暴走女子!」と呼ばれている、主人公のヨシカ(松岡)。脳内破天荒な性格で、会社の同期である月島来留美(石橋杏奈)をはじめ、毎日の生活で関わる人々に対し、ひたすら自身が常日頃から考えている、相手には特に関係ない話題をぶつけまくります。おそらく、先に紹介された宝石美輝(桐谷美玲)とも争えるレベルの、こじらせ女子です。ヨシカに対して「イタイな」と思う人もいるかもしれませんが、それと同じくらいヨシカの考えていることに「あーなんかちょっと分かる」と共感する人も多いはず。ヨシカは思ったことを頭で考えず、思ったらすぐ顔に出すか、口に出す。そんな素直な性格は愛せる部分でもあるし、ヨシカが家でブツブツ言ってるシーンなどは、あるあるな人も多いのかなと思います。

 一見普通の女子に見えて、だけど脳内破天荒で、二(渡辺大知)から愛される可愛さも供えていて、どこかひねくれていて……そんな彼女の複雑なキャラクターを、バランスを保ちながら演じている松岡さんの演技には、圧倒されました。最近見た作品では、『コウノドリ』(TBS系)で後輩の吾郎先生(宮沢氷魚)にビンタしていたシーンが強烈でした。また、『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ系)では、新米主婦・サーヤ役として、時にはおっちょこちょいな可愛らしさを前面に出し、ミュージカルシーンではキレの良いダンスと歌唱も披露していました。これまで、様々な役でその幅の広さを見せつけてきた松岡さんの、初主演映画となる本作への意気込みは、先ほど掲載されたインタビュー(松岡茉優が語る、初主演映画『勝手にふるえてろ』での挑戦 「自分だけには嘘をつかないように)のとおりです。

 劇中での、ヨシカの空想彼氏であるイチと、現実の彼氏である二。イチはクラスの人気者で趣味も合う“ヨシカが好きな人”、二は思いやりがあって楽しませてくれるけれど「タイプではない」と断言できる“ヨシカを好きな人”。これが理想と現実なのか、と突きつけられた感じもしましたが、ヨシカが最後に出した結論は、理想と現実という軸で考えたものではなかったように思います。ヨシカは、最後、なぜその人を好きになってしまうのか。なんとなく掴みきれない彼女の言動に注意深く耳を傾けることで、より一層楽しめるはずです。そして、ヨシカの「勝手にふるえてろ」というセリフには、きっとしびれてしまうでしょう。

 クリスマス直前、そして寒い冬が迫るなか、『リベンジgirl』『勝手にふるえてろ』といった、一風変わった恋愛映画で心を温めてみてはいかがでしょうか。

■公開情報
『勝手にふるえてろ』
12月23日(土・祝)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
原作:綿矢りさ著『勝手にふるえてろ』文春文庫刊
監督・脚本:大九明子
出演:松岡茉優、渡辺大知(黒猫チェルシー)、石橋杏奈 、北村匠海(DISH//)、趣里、前野朋哉、池田鉄洋、稲川実代子、柳俊太郎、山野海、梶原ひかり、金井美樹、小林龍二(DISH//)、増田朋弥、後藤ユウミ、原扶貴子、仲田育史、松島庄汰、古舘寛治、片桐はいり
主題歌:黒猫チェルシー「ベイビーユー」(Sony Music Records)
配給:ファントム・フィルム
(c)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
公式サイト:http://furuetero-movie.com/

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