『ぼくは麻理のなか』『セトウツミ』『オトナ高校』……秋クール深夜ドラマのイチオシは?
『陸王』、『奥様は、取り扱い注意』、『ドクターX ~外科医・大門未知子~』……など、早くも盛り上がりを見せている今シーズンのテレビドラマ。プライムタイムはもちろんのこと、各局、深夜ドラマにも工夫を凝らしている印象だ。そんな深夜ドラマは、どのようなラインナップがあり、いったい何が面白いのか。無類のドラマフリーク・麦倉正樹氏に、秋クール深夜ドラマのイチオシ作品ベスト3を選んでもらった。(参照:今期、もっとも観るべきドラマは? ドラマ評論家が選ぶ、秋ドラマの注目作ベスト5)
1.ぼくは麻理のなか(月曜24時25分~/フジテレビ系)
『惡の華』をはじめ、青春の劣情や鬱屈とした感情を描くことで定評のある漫画家・押見修造の代表作を池田エライザ主演でドラマ化。古くは『転校生』、最近では『君の名は。』などと同じく、男女の入れ替わりを描いた物語ではあるものの、入れ替わったはずの「女の子(麻理)」の意識が消えてしまうというミステリアスな展開が秀逸な一本です。外見は容姿端麗な女子高生・麻理(池田エライザ)だけど、その中身はひきこもり気味の男子大学生(吉沢亮)。そんな外と内が異なる複雑な人物を、池田エライザが「どう演じるか?」がポイントとなるドラマですが、初回を観た限り、その芝居は上々の様子。ある意味、体当たりの芝居を披露しています。
さらに、麻理の変化に誰よりも早く気づき、中身が入れ替わったことを看破する、謎の同級生のメガネっ子(柿口依)を演じる、中村ゆりかの思い詰めた芝居も刺激的でいいですね。可愛い女子の登場するミュージックビデオを数多く手掛けている映像作家・スミスをはじめ、一癖も二癖もある演出陣は、このミステリアスで官能的な物語を、果たしてどう描き出していくのでしょうか。個人的には、今クールの深夜で、いちばんの注目作です。ちなみに、劇伴は川谷絵音が担当しています。
2.セトウツミ(金曜24時52分~/テレビ東京系)
こちらも漫画原作の一本です。とはいえ、その内容は、関西弁の男子高校生2人が放課後、川べりの階段に腰掛けて、意味のあるような無いような話を延々と繰り広げるという、実に異色の物語。昨年公開された映画版の『セトウツミ』でダブル主演した菅田将暉と池松壮亮に対して、今回のドラマ版で主演の2人……「瀬戸小吉(セト)」と「内海想(ウツミ)」を演じるのは、葉山奨之と高杉真宙という注目の若手俳優たちです。
ドラマ『僕たちがやりました』の「マル」役の好演も記憶に新しい葉山と、映画『散歩する侵略者』で印象的な役どころを演じていた高杉。いずれも現在21歳という同い年コンビが繰り広げるボケとツッコミのやり取りは、菅田・池松コンビとはまた異なる、初々しい魅力を打ち放っています。というか、観ているうちに、だんだんツボに入ってきました(笑)。一応、本作のヒロイン役でありながら、内海から容赦ないツッコミを食らう「樫村一期」を演じる清原果耶も、現役女子高生らしい清々しさで良いですね。大森立嗣監督による映画版に対して、今回のドラマ版の演出は、瀬田なつき、坂下雄一郎、杉田満など、今後の日本映画を担う若手監督たちが手掛けていることから、映画ファンも要注目の一本と言えるでしょう。
3.オトナ高校(土曜日23時05分~/テレビ朝日系)
『フリンジマン~愛人の作り方教えます~』(テレビ東京系)、『ラブホの上野さん season2』(フジテレビ系)など、なぜか「モテ指南」系のドラマが多い印象のある、今クールの深夜ドラマ。そのなかでも、突飛な設定と妙に豪華なキャストで、ひときわ異彩を放っているのが、この『オトナ高校』です。
「性経験のない30歳以上の男女は、国家が運営するオトナ高校への入学を義務づけられる」という突飛な舞台設定からスタートした本作。三浦春馬演じる主人公は、トップバンクで将来を嘱望される東大卒のエリートだが、実は女性経験がなく、半ば強制的に「オトナ高校」に入学させられてしまう……という、ある種倒錯したオーバー30の「学園もの」が、そこで展開されていくのです。同じく「オトナ高校」の生徒役として、黒木メイサ、高橋克実が、その教師陣には、竜星涼、松井愛莉など若手俳優たちが、いつもとは異なるテンションの芝居を披露しているのも注目ポイントのひとつでしょう。
ちなみに、このドラマは、映画『ビリギャル』、ドラマ『就活家族』などで知られる脚本家・橋本裕志のオリジナル作とのこと。テレビ朝日が、『SmaSTATION!!』の終了に伴い新設したドラマ枠ということで、キャストやスタッフなど、並々ならぬ気合いが入っているようにも見受けられますが、視聴者の反応は、どうなのでしょう。そちらも合わせて気になるところです。