テレ朝「ドラマ枠をシリーズ作で埋める」ことの是非 刑事&医療モノには海外販売の狙いも
海外販売と時代劇の代替というメリット
シリーズ作には、「海外へ販売しやすい」というメリットもある。日本のドラマは1クール(3か月間)全9~11話の作品が多く、欧米やアジアなどで放送する上で「少ない」とみなされてしまう。そんな国際競争上の不利を補えるのがシリーズ作であり、だからこそ「世界の共通テーマである刑事や医療モノが選ばれている」のだ。
また、シリーズ作には、「視聴者に安心感を与えられる」という側面も強い。とりわけ中高年層は、シリーズ作の“定型美”とも言える作品フォーマットに、『水戸黄門』『遠山の金さん』など時代劇の代替作として安心感を覚えている。『相棒』『科捜研の女』『ドクターX』の3作から古き良き時代の香りを感じる人が目立つのはそのためだろう。
現状は「好きな人」と「嫌いな人」の両極端だが、視聴率の面では申し分ない結果を出しているのは間違いない。シリーズ作の象徴である『相棒』の視聴率が1桁まで下がるなどの窮地に陥らない限り、今後もこの戦略は続くのではないか。ただ、極端な戦略だけに、視聴率が下がりはじめたとき、「嫌いな人」たちからの猛バッシングを食らうリスクもあるなど、先行きは必ずしも明るいとは言えない。
■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間20数本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。