『ナラタージュ』インタビュー
「松本潤のイメージをぼかしていくことから取り掛かった」 行定勲監督が明かす『ナラタージュ』の役作り
ーー予告でも話題になっているラブシーンは、どのようなイメージで撮られましたか。
行定:葉山先生はものすごく大切なものを扱うような触れ方をするということを極端に松本くんに意識して演じてもらいました。2人の肌と肌が重なってる間に感情がものすごく結びついてるような、もしかすると相手の感情を締め付けすぎて、息苦しくさせているくらいの気持ちとか、そういう感情ベースで作りたいと考えていました。泉はセックスを何度も経験している人間ではないので、感情に余裕が見えないようにする必要がありました。でも、緊張や恥ずかしさといった心の動きは、ラブシーンに慣れていない有村さん自身にそのまま重なってる気がしたので、そのまま活かすことを念頭に撮りました。
ーー葉山先生と小野怜二(坂口健太郎)、それぞれのセックスの印象もまた違いました。
行定:小野とのラブシーンは痛々しい感じを演出していて、泉の中でこれで良かったのかどうか分からないという気持ちで抱かれてる様子ですよね。“この人で良かった”と本当に確定ができるのは、もっと時間が経った後の話で、同じような感情を持ったことがある女性は多いのかなと思って。映画って自分の記憶を思い出させる役割があると思うので、“私はどうだっただろう”とふと思い出してもらえるような表情を目指しました。
「“壁ドン”の映画とかは、“上手くいく恋”を描いてる」
ーー『ナラタージュ』の恋愛映画としてのポイントを教えてください。
行定:恋愛映画のひとつの醍醐味は、“障害があること”です。最近の“壁ドン”の映画とかは、“上手くいく恋”を描いてる。ボーイ・ミーツ・ガールの話の中にも、もちろん障害はありますが、それを乗り越えてやっと結ばれてハッピーになる結末がほとんどです。しかし、そこから始まるのが本当の恋愛なんだと思います。
恋愛映画で描くべきものは、ふたりが出会って、想い合った後が面白い。『ナラタージュ』も出会っているところから始まっていて、出会っているのに、なぜ、この話はうまくいかないのか、という展開にしています。
この映画の中には、誰もがどこかで見たことがある顔があるはずです。上手くいかない恋愛に対してヤキモキしたりとか、好きになってはいけない人とわかってはいても、この人といたい思う気持ちとか、そういう感情があるものが恋愛だから。映画の中では、ほとんどが障害によってそのような恋愛が上手くいかないように描かれています。だからこそ狂おしい気持ちになる。そこには恋愛をやる覚悟が必要で、別に不倫に憧れてるわけではなくて、葉山と泉は、出会ってしまったので仕方ないんです。その男と女のどうしようもなさが描かれるのが、恋愛映画の醍醐味かなと思います。
(取材・文=大和田茉椰)
■公開情報
『ナラタージュ』
10月7日(土)全国ロードショー
出演:松本潤、有村架純、坂口健太郎、大西礼芳、古舘佑太郎、神岡実希、駒木根隆介、金子大地、市川実日子、瀬戸康史
監督:行定勲
原作:島本理生(「ナラタージュ」角川文庫刊)
脚本:堀泉杏
音楽:めいなCo.
主題歌:「ナラタージュ」adieu(ソニー・ミュージックレコーズ)/作詞・作曲:野田洋次郎
配給:東宝=アスミック・エース
(c)2017「ナラタージュ」製作委員会
公式サイト:http://www.narratage.com/