坂口健太郎、『ナラタージュ』で真に迫った演技 モデル卒業して実力派俳優へ
坂口健太郎が、俳優として勢いを増している。10月7日から公開の行定勲監督映画『ナラタージュ』では、2016年に『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)でも共演した有村架純を巡り、嵐の松本潤と恋敵となる役どころを演じている。同作は、時が経ち再会した高校教師・葉山貴司(松本潤)と女子生徒・工藤泉(有村架純)が禁断の恋に落ちる模様を描いたラブストーリーで、坂口演じる青年・小野玲二は泉を好きになるが、泉の葉山への想いに気づき、嫉妬に苛まれていく。今秋もっとも注目される恋愛映画で、坂口にとっても新境地といえる作品だ。
いち早く試写を見ることができた。ネタバレにならない程度にポイントを言うと、坂口は本作でかつてないほど“切ない”表情を見せている。葉山に振り向いてもらえず苦しんでる泉に対し、優しく微笑みかける表情は、これまでの彼の出演作でも見ることができた朗らかなものだ。しかし、その奥にある複雑な感情を推し量ると、途端にその笑顔が苦しいものに見えてくる。極めつけは、泉の行動に嫉妬して激昂するときの表情だ。人が人を好きになるということが、どれほど切実なものなのか、坂口は台詞以上に表情と立ち振る舞いで物語る。だからこそ、坂口の不器用なラブシーンには、心が痛むものがあった。『いつ恋』を見ていた方なら、いっそうその切なさを噛みしめることになるのではないだろうか。そこには、いわゆる“イケメン俳優”の枠に収まらない、役者・坂口の真に迫った演技がある。
坂口は、芸能界への入り口となった『MEN’S NON-NO』(集英社)専属モデルを7月号をもって卒業している。2010年に同誌のオーディションに合格した後、モデルとして活動をスタート。“塩顔フィーバー”で火がつくと、田辺誠一以来、20年ぶりに専属モデルとして『MEN’S NON-NO』2014年6月号にて単独表紙を飾るほどの人気を博した。2014年に俳優デビューを飾り、2017年、日本映画テレビプロデューサー協会が選出する第41回エランドール賞・新人賞、『64-ロクヨン- 前編/後編』で第40回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞し、俳優としてのキャリアを着々と積んでいる真っ最中である。
『MEN’S NON-NO』7月号の特別付録にて、坂口は「モデルとしての様々な経験ができた過去があるから、現在の自分がいる」と、そのキャリアを振り返っている。坂口が芝居のレッスンを受けた恩師からは、「画面の中に立っているだけで、“その人”がわかるような芝居ってすばらしい」「たぶん、健(太郎)はモデルをやっているから、それが自然にできている」と言われたことを明かしていた。坂口がこれまで、写真1枚で、その企画のコンセプトやイメージを伝える上で発揮してきた繊細な表現力は、彼の強みになっているようだ。