『ひよっこ』佐久間由衣が羽ばたくとき 第24週で描かれた3人の物語のクライマックス
みね子(有村架純)にとって時子(佐久間由衣)は、同郷の幼なじみであり、共に上京し励ましあってきた親友であり、女優という夢を追いかける一目置いた存在だ。『ひよっこ』(NHK総合)第24週「真っ赤なハートを君に」では、時子が「ツイッギーそっくりコンテスト」で優勝し、女優への階段を駆け上がっていく。みね子と同じ幼なじみであり、時子の心の支えとしての“片思い”をし続けた三男(泉澤祐希)、どんな時も一番近くにいたみね子。それぞれが時子が“遠い存在”になっていくことを察するシーンは、ここまで積み重ねてきた3人の物語のクライマックスであり、新たなスタートでもある。
時子のコンテストに向け、女性のみで開かれる「あかね荘作戦会議」。女優としての大先輩である世津子(菅野美穂)は、「男の人たちが選ぶお気に入りの女の子像ではなく、女の人が選ぶスターが求められている」と作られたブームを超え、予想を超えた新しい風、スターが必要とされていることをアドバイス。夢を追う時子の相談相手であったみね子は、「もっと堂々としていてほしいんだ」と弱さや辛さを忘れさせる、憧れの存在になるべきだと時子の背中を押す。
ピンクのミニスカート姿でステージに颯爽と現れた時子は、まさに女優であった。壇上で求められるのは、演じること。裏天広場でいち早く行われた女性だけのリハーサルも、三男が固唾を飲んで見届けたコンテスト本番も、時子は堂々とした態度であり続けた。「日本中の、世界中の女の子達、女性達。いろいろ大変だよね、女として生きて行くのは。でも、女の子の未来は私に任せて! みんな、私についてきて!」。自信に満ち溢れたその姿は、ツイッギーを彷彿とさせる女の子が憧れるかっこいい女性像そのもの。裏では緊張する彼女の様子を描くことで、時子が演じていることを表しているのが分かる。
殻を自分で破り、女優として羽ばたいていった時子。それを見守る三男の片思いも、同時に終わりを迎えることとなる。時子を思うことで、彼女の心の支えになっていた三男。彼の思いを受け止め、「解放してやりたい」と夢を追うことを決心した時子。嬉しさをにじませる彼の笑顔にの奥には、涙が溜まっていた。<好きなんだけど/離れてるのさ/遠くで星をみるように/好きなんだけど/だまってるのさ>、三男が帰路、震える声で歌う西郷輝彦の「星のフラメンコ」が二人の関係を痛いほどに表している。