今年話題を呼んだ“甘く切ない”2作ーー映画#ララランドとムーンライト、前田敦子 × 沖田修一監督対談

 映画『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』熱は今もまだ冷めやらない。2作は公開以降、心に染み入るストーリーと鮮やかな色彩で多くの観客を魅了し、2017年オスカー有力候補として注目を集めてきた。その授賞式では作品名が読み間違えられる前代未聞のハプニングが起きたものの、監督と演者の当意即妙な受け答えが両作のファンの映画熱をさらに後押しする結果になったから面白い。毛色の違う作品でありながら、奇しくも「甘く切ない」ストーリーという共通点のある2作の見どころを、無類の映画好きで知られる女優の前田敦子、話題作を送り出し続けている沖田修一監督の2人に聞いた。

沖田「『ラ・ラ・ランド』も『ムーンライト』も劇場に足を運びました」

――2人とも両作はひとりで観たそうですね。

前田敦子(以下、前田):はい。私は試写で拝見しました。

沖田修一(以下、沖田):僕も新百合ケ丘の映画館でひとりで観たんです。

前田:映画はひとりで観ることの方が多いので、こうして映画の感想を改めてお話しするのは新鮮です。

沖田:そうだよね。とは言っても『ラ・ラ・ランド』なんかは普通カップルで観に行くんじゃないのかな?

前田:このビジュアルは行っちゃいますよね。演じている2人がエマ・ストーンとライアン・ゴズリングですもん。若いカップルは絶対に観たいはず。

沖田:それに、これだけ迫力があるとね。まずは「踊りが良かったね」という話で盛り上がれる。

前田:恋愛という観点で話すと、『ラ・ラ・ランド』も『ムーンライト』もしっとりした感じになっちゃいますからね。

沖田:うん、その上でそれぞれの面白さがあったよね。そういえば授賞式での読み間違え事件は衝撃的だったんじゃない?

前田:あれは本当に大事件で、ある意味盛り上がりましたよね。ちなみにお仕事でアカデミー賞を予想する企画があったんですが、私は『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンが間違いなく主演女優賞を獲ると思っていたんです。作品賞となると、去年は『スポットライト 世紀のスクープ』が受賞していたようになかなか予想が難しい。そこで『ムーンライト』みたいな深い作品が受賞したのには納得です。

沖田:なるほど。しかし、こうして前田さんの話を聞いていると、僕は受賞の予想なんて全く考えてもいなかったな(笑)。

――2人とも幅広いジャンルの作品を観るとは思いますが、ハリウッド映画はどうでしょう?

沖田:好きですね。映画に夢中になりだした高校生ぐらいの頃には多くのアカデミー賞受賞作を観ていました。外国語賞受賞作ばかりを立て続けに観ていたこともありましたし。今年ですと『ラ・ラ・ランド』も『ムーンライト』も劇場に足を運びましたが、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を観逃したのが残念だったな。

前田:あの作品、私の周りは好きな人が多いですよ。

沖田:前田さんは本当によく観ているよね。

前田:網羅はしていないですけれどね。ところで、こういったハリウッド映画で監督も泣いたりしますか?

沖田:昔は泣かなかったけど最近なぜか涙もろい。『ラ・ラ・ランド』を久しぶりに家で観直した時に「ずっと愛しているわ」と言うシーンで思わず泣いてしまいました。「なんだかいいな~」としみじみ思いまして。

前田:ふふふ(笑)。

沖田:あ、言わなきゃよかったな……。

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