生田斗真が演じる女性・りんこになぜ共感できる? 『彼らが本気で編むときは、』が描く優しい生活
生田斗真が演じるのは、女性の心を生まれ持ちながら男性の体で生まれたりんこという難しい役どころだが、彼の演技が提示するのは自分らしく生きるひとりの人間の姿である。生田斗真は、ハンディキャップを受け入れながらも、自身の趣向に沿った服装や化粧を施し、やさしく、そして強く生きる彼女を演じきった。彼の演技は存在感を放ちつつも、物語から浮くことなく、りんこという女性を見事に描いている。そして桐谷健太の演技は、そんなりんこをひとりの人間として支えるとても落ち着いたもので、彼なくしてりんこという存在は決して成り立たなかっただろう。
トランスジェンダーという役柄は、自分らしく生きるりんこの姿をより印象的に描き、ひいては周りの登場人物それぞれに光を当てる。同様に自己の性に悩むトモの同級生の少年カイ、母親の愛情を知らないトモ、そしてりんことは対照的に描かれたトモの母親ヒロミ。物語の人々も、彼らと全く同じように複雑な人間関係の中からささやかな喜びや切なさを見出す。この映画の一番の見どころは、そんなりんこというひとりの存在によって、懸命に生きる彼らをひとりひとり、やさしく掬い上げるところにあるのではないだろうか。
(文=井田悠太)
■公開情報
『彼らが本気で編むときは、』
公開中
出演:生田斗真、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子、桐谷健太 ほか
脚本・監督:荻上直子
配給:スールキートス
(c)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会
公式サイト:kareamu.com