『カルテット』はヒューマンドラマからサスペンスへ 急展開する物語の面白さ
ドラマ『カルテット』を観ていると、あっという間の1時間。なのに、2時間映画を観たような重厚感。これは、時空の歪みか?と思ってしまうのは、筆者だけだろうか。それほど、このドラマは1話1話に情報が詰まっている。雑談がその後の展開の伏線になっていたり、小ネタが散りばめられていたりするので、咀嚼して丁寧に観たくなるからだろう。
だが、2月7日放送の第4話は、そうして楽しんできた視聴者のペースをかき乱すようなスピード感だった。これまで、真紀(松たか子)、別府(松田龍平)、すずめ(満島ひかり)と、主要メンバーの背景が順に明かされていき、今回は家森(高橋一生)の番だな、と構えていた。すると、宝くじで大金を当てたことがあり、Vシネマの男優をしていたこともあり、結婚をしていた過去があり、なんなら息子もいて、さらに大怪我をして入院したこともあって……と、矢継ぎ早に秘密が話される。
状況を整理しながら画面を見つめていたら、あっという間に家森は我が子を誘拐。子どもから「いつ離婚終わるの?」なんて言われて、うぐぐ。“大人としてどう答えるのが正解か?”などと考えていたら、さらに元妻から「結婚してなかったらって思い浮かべられるほど悲しいことない」という言葉に、ぐへぇ。一つひとつの重たい言葉を受け止め、いろいろと考えされられる間にも、時が流れていく。切ない親子演奏会、そして別離。家森の美しい涙に見入っていたら、気づけば前半30分が終了。てんこ盛りなのに雑な流れではない、それがこのドラマの魅力だ。
息子との別れという心の穴を抱える家森を、元気づけるようにフェイスペイントでおどける3人。「ゴミは気になる人が出せばいいのか問題」でもクスッとさせられ、いつもよりコミカルな展開に微笑ましくも思っていた。心温まるヒューマンドラマを観ている気分になっていた。だが、このドラマはサスペンスだったのだ。うっかり忘れるところだった。いや、ちょっと忘れていた。
だから、 真紀の失踪した夫の母・鏡子(もたいまさこ)とすずめの会話を聞いていた来杉有朱(吉岡里帆)が、「1000円貸してください」と声をかけ財布をのぞきこんで「5000円ありますね」と笑顔で脅迫する姿に、思わず“怖〜ッ”と震えた。そう、これはサスペンスなのだ。そこからは後半は、全てを疑ってしまう展開。家森が真紀に近づいたのは、真紀の夫が入院中に話していた「妻に落とされたんだ」というネタでゆすろうとしていたからだと、すずめに告白する。なぜ、すずめに明かすことにしたんだ、家森! そこにも何か意図があるのか?