『山田孝之のカンヌ映画祭』は映画業界をどう描く? 批評性と自己言及性が生み出す「緊張感」

『山田孝之のカンヌ映画祭』は映画業界をどう描く? 批評性と自己言及性が生み出す「緊張感」

 ところで、今回の『カンヌ映画祭』が扱っている題材は、そのタイトルが示す通り、ズバリ“映画”である。そして、その舞台となるのは、山下はもちろん、共同監督である松江にとっても“ホーム”である“映画業界”だ。よって、そこに巻き込まれていく人々も、第2回に登場した人たちのように、いわゆる“素人”ではない、映画に関するプロフェッショナルたちが中心となっていくのだろう。つまり、山田の突飛な思いつきに巻き込まれる形でありながらも、彼らはいつの間にか自分たちの“ホーム”に辿り着いてしまったのだ。

 “アウェイ”に身を投じるのはなく、“ホーム”に招き入れてしまったからこそ生まれる、ある種の“批評性”。さらに、そこで避けては通れないであろう“自己言及性”。この複雑な構図こそが、今回の企画に他では見られないスリリングな面白さを生み出しているのだ。映画賞の存在意義とは何なのか? そもそも映画とは何なのか? そんな根本的な問い掛けも、実は本作は内包しているのかもしれない。そう、第2回では、日本映画の現状に対する問題提起も、サラリとなされていた。けれども、それは同時に、ひとつの“リスク”となって本作に降りかかってくる可能性も否めない。テレビの人間ならいざ知らず、映画の人間が映画業界を語ることによって生じる“リスク”。この企画をある種の“パロディ”として成立させるには、あまりにも距離が近すぎるから。

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 それにしても、行き当たりばったりのようでいて、実は相当難易度が高いように思われるこの方程式を、山下&松江の監督コンビは、一体どのように解いていくのだろうか。そして、その先に訪れるカタルシスは、果たしてどんな種類のものになるのだろうか。ともすると、映画関係者だけが盛り上がる(あるいは怒り出す)危険性だって十分考えられる本作。それを、間口の広いエンターテインメントとして成立させるために、彼らは今後どんな“仕掛け”を用意しているのだろうか。そこである種の“ジョーカー”として機能するのは、ひょっとすると本作において最も意外なキャスティングである芦田愛菜なのかもしれない。

 などなど、この先の展開に早くも興味が尽きない前代未聞のドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』。続く第3回では、いよいよ試作映像……いわゆる“パイロット版”の制作がスタートするという。そこでは、監督=山下、役者=芦田という、それぞれの“本業”が披露されることになるのだろう。ひとまずは、その推移をこれまで以上にドキドキしながら見守っていくことにしたい。無論、大きな期待とともに。山田・山下・松江……このチームは、きっと何かやってくれるに違いないから。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

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■公開情報
『山田孝之のカンヌ映画祭』
毎週金曜 深夜0時52分〜
出演:山田孝之、芦田愛菜、ほか
監督:山下敦弘、松江哲明
構成:竹村武司
 (C) 「山田孝之のカンヌ映画祭」製作委員会
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/yamada_cannes/

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