稲垣吾郎はなぜ“変人”役でも愛される? 『不機嫌な果実SP』こじれた役柄の面白さ

稲垣吾郎、癖がある役がはまるワケ

 今回、前後篇に分けられた『不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~』は、連続ドラマから3年後ということで、すでに麻也子と航一は離婚し、麻也子は不倫相手だった通彦(市原 隼人)と結婚3年目になっている。麻也子の親友で航一の不倫相手だった久美(高梨臨)は、航一と結婚間近といった状況だ。今回の航一は、嫉妬という面においては少々落ち着きを見せており、狂気性は薄い。しかし、マザコンキャラの面白さはいや増しており、離婚した麻也子には“嫉妬”ではなく“心配”をするという、これまた“こじらせた愛情”を募らせている。ほかの屈折した登場人物たちの中にいると、一周まわって良心的なキャラクターにさえ感じられるのが、むしろ不気味で面白い。

 稲垣は同作のニュースリリースにて、「スペシャルのお話を頂いたときは『来たな!』と(笑)。(中略)とても特殊で刺激の強いキャラクターである航一は、僕にとって“大嫌いだけど、大好きな人”みたいな存在。そういう自分の中の“ある種の違和感”を、今回も思う存分楽しみたいと思います。主人公をハチャメチャにかき回すクセモノを、皆様の期待に応えられるよう演じたいです」とコメントしており、手応えは十分のようだ。実際、前篇を見る限り、以前に増して楽しそうに演じているのが伺える。

 稲垣吾郎は歳を重ねるにつれ、クセモノ役者として年々魅力が増している。いや、むしろそのキャラクターに年齢が追いついて来たのかも知れない。どんな役を演じても彼には負のイメージが付かない不思議な魅力があり、脇にまわっても輝きを放っている。稲垣の役者人生はまだまだ続いていくはずだ。今夜放送の後編でも、期待の斜め上をいくキャラクターを披露し、我々を楽しませてくれるに違いない。

(文=本 手)

■放送情報
『不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~』
2017年1月、テレビ朝日系24局(※一部地域を除く)で放送
出演:栗山千明、市原隼人、高梨臨、橋本マナミ、稲垣吾郎、六角精児、萬田久子
原作:林真理子『不機嫌な果実』(文春文庫)
脚本:江頭美智留
音楽:沢田完
主題歌:斉藤和義『マディウォーター』(スピードスターレコーズ)
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:川島誠史(テレビ朝日)、木曽貴美子(MMJ)
演出:小松 隆志(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ

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