2017年、ドラマ界に必要なのは“スター・クリエイター”だ ドラマ評論家が各局の現状を考察

TBS

 山田太一、野島伸司、宮藤官九郎といった脚本家による作家性の高いドラマを放送していたTBSの金曜ドラマに、かつてのような勢いはない。しかし、『重版出来!』と『逃げるは恥だが役に立つ』の登場で軌道に乗り、坂元裕二の『カルテット』が放送されることで火10が、金曜ドラマに変わるドラマファンが期待する熱いドラマ枠となりつつある。

フジテレビ

 2016年はフジテレビにとっては最悪の年だった。中でも月9の凋落とバラエティ番組『SMAP×SMAP』の終了は大きく、80年代からフジテレビが牽引してきた若者カルチャーとしてのテレビが終わったことを象徴する出来事だろう。

 現在のフジテレビの状況は、90年代後半に『ドラゴンボール』等の人気漫画が軒並み終わったことで部数が激減した時期の少年ジャンプを思わせる。当時のジャンプが行ったことは、編集者と新人漫画家が面白い連載を立ち上げるという原点回帰だ。その結果、『ONE PIECE』や『NARUTO -ナルト-』といった傑作が次々と生まれ、世代交代に成功した。

 フジテレビにはヤングシナリオ大賞という新人脚本家の登竜門がある。古くは坂元裕二や野島伸司、近年では『逃げ恥』の野木亜紀子を輩出している。トレンディドラマの時代から、フジテレビのドラマは若手が作ってきた。原典回帰をするなら、過去の成功体験に依存して昔のスターを引っ張りだしてくるのではなくて、新人に好きにやらせる仕組みこそ、復活させるべきだろう。

 その意味で注目したいのが日曜9時から放送される『大貧乏』。『リッチマン、プアウーマン』を手がけた脚本家の安達奈緒子とプロデューサーの増本淳が久々に手掛ける本作が、どのような作品となるのか楽しみである。

総論

 昨年は『重版出来!』と『逃げ恥』のヒットで脚本家・野木亜紀子の名が知られることとなったが、今のテレビドラマに必要なのは新しいスター・クリエイターの登場だろう。新作ドラマの傾向を見てみると、その流れが少しずつ生まれており、安達奈緒子や福田雄一といったクリエイターの最新作が注目されれば、テレビドラマに活気が生まれるのではないかと思う。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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