2017年、ドラマ界に必要なのは“スター・クリエイター”だ ドラマ評論家が各局の現状を考察

 2017年のテレビドラマは、作り手の顔が見える作家性の強いドラマが復活してくるのではないかと期待している。では、各テレビ局は作家性を準備するような環境は整っているのか? まずは各局の現状を考察したい。

NHK

 『べっぴんさん』は好調だが、朝ドラがテレビドラマの中心を担った時代はひと段落したように見える。対して『真田丸』の成功によって大河ドラマに対する注目が高まっており、森下佳子脚本の『おんな城主 直虎』がどうなるのか気になるところだ。

 木皿泉の『富士ファミリー』や藤本有紀の『ちかえもん』といった、作家性の強い脚本家のドラマがNHKには多い。しかし、すでに民放でキャリアを確立した脚本家の作品を作り続けることは大事だが、もっと若いディレクターや新人脚本家をゼロから育てるような試みがあってもいいのではないかと思う。

テレビ東京

 低予算で小規模ながら、民放が作らないマニアックなドラマを作ることで独自の立ち位置を担っているのがテレ東だ。

 福本伸行の人気漫画をドラマ化した『銀と金』はエンタメ性が高い作品のため、今までとは違う広がりが期待できる。一方、テレ東でしかできないことを極北まで高めたのが『山田孝之のカンヌ映画祭』だろう。2015年に放送された『山田孝之の東京都北区赤羽』のチームが再び結集した本作には、どこに行くのかわからない不穏な気配が立ち込めており、ドラマやドキュメンタリーといった枠をはみ出した問題作になるのではないかと楽しみだ。

テレビ朝日

 トレンディドラマ以降のシーンから隔絶していたが故に、独自の進化を遂げたのがテレ朝のドラマ。『相棒』や『科捜研の女』のようなロングヒットシリーズはテレビ朝日だからこそ生まれたものだ。また、『ドクターX~外科医・大門未知子~』の米倉涼子をスターダムに押し上げたのはテレ朝が『黒革の手帖』以降、起用し続けたからで、キャスティングにもテレ朝ドラマには独自のものがあった。しかし、近年は木村拓哉、草なぎ剛、天海祐希といったスター俳優が出演するようになり、それと引き換えにテレ朝ならではの独自性が失われつつある。トレンドを無視したテレ朝ならではの渋いドラマを追求してほしい。

日本テレビ

 ヒット作が続いているが、どこか保守的に見えるのが日テレのドラマ。『女王の教室』や『野ブタ。をプロデュース』といった意欲作を連発した土9枠は子ども向けにシフトし、10代後半以上をターゲットにした青春ドラマの流れは日曜ドラマに移っている。水10枠は働く女性を主人公にしたドラマを連発し、ポスト月9とでも言うような役割を果たしているが、どうにも綺麗に棲み分けができすぎていて、もっと作家性が感じられる作品が見たい。
そんな中、今クールの土9で放送される『スーパーサラリーマン左江内氏』は『勇者ヨシヒコ』シリーズや『アオイホノオ』等の深夜ドラマで有名な福田雄一が当番。脚本と演出を一人でてがけ、時に全話演出も担当する福田雄一が久々に土9を手がけることで、何か新しい波が起きるのかもしれない。

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