『傷物語<冷血篇>』が示したアニメ映画の新潮流 “三部作構成”のメリットを考える

『傷物語〈Ⅲ冷血篇〉』が示す新潮流

 『<鉄血篇>』では阿良々木暦とキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの邂逅。台詞を抑えて、このシリーズが守り抜いてきた西尾維新ワールドを前面に押し出した。続く『<熱血篇>』では3人のヴァンパイアハンターとの戦いが描かれた。終始繰り返されるバトルアクションに加え、ヒロイン・羽川翼との関係性を語る。その点で、最も映画らしい密度の一篇だったといえよう。そして今回の『<冷血篇>』は四肢を取り返したキスショットが完全体になり、阿良々木暦が人間に戻るためのバトルと、キスショットとの別れを描き出す。つまりここで、“転”と“結”を一気に片付けたのである。

 本作の場合は、この先に続く壮大な物語へのプロローグであるという前提があったとはいえ、この方法論が新たに作られた作品で使われるとなれば、続きとなるコンテンツを生み出すことも決して難しい話ではない。1篇だけでは不完全すぎ、2篇ではまとまりすぎるが、3篇ならば含みも持たせられる上、どのカラーが最も受け入れられるかが判るというわけだ。

 もちろん、この後に『<物語>シリーズ』へと繋がるとなれば、否が応でもまた『化物語』から観始めてしまいたくなる。(すでにAmazonプライムで配信されているそれを観直し始めているが)そして『終物語』まで走りぬいたら、また『傷物語』へと戻ってきてしまうに違いない。この『傷物語』は、いわば『スター・ウォーズ』のプリクエル・トリロジーと同じ役割を果たした三部作ということだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■作品情報
『傷物語〈Ⅲ冷血篇〉』 
全国公開中
配給:東宝映像事業部
(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト    
公式サイト:http://www.kizumonogatari-movie.com/

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