『ファンタビ』造形美術監督が語る、“魔法道具”の作りかた 「僕らの遊び心が詰まっている」

『ファンタビ』造形美術監督インタビュー

 エディ・レッドメイン主演作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が11月23日より公開される。本作は、世界的に大ヒットを記録する映画『ハリーポッター』シリーズの新シリーズ。魔法動物をこよなく愛する魔法使いニュート・スキャマンダーが、1926年のニューヨークを舞台に様々な事件に巻き込まれていく模様を描く。原作者のJ・K・ローリングは、本作の公開に先駆け、新作“北アメリカ大陸の魔法界”を自身のホームページ“ポッターモア”にて公開。先日、アメリカの魔法省の起源が描かれた最終章“アメリカ合衆国魔法議会(MACUSA)”を発表し話題を集めた。リアルサウンド映画部では、『ハリーポッター』シリーズに登場する魔法道具の制作を務め、本作でも造形美術監督を担当しているピエール・ボハナ氏にインタビュー。本作に登場する魔法道具の解説や製作時のエピソードを語ってもらった。

「J・K・ローリングはなぜ舞台をこの時代に設定したのか」

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ピエール・ボハナ氏

ーー『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の美術を手掛けるにあたり、どんなことを意識しましたか?

ピエール・ボハナ(以下、ピエール):我々がデザインを考える時に一番意識したのは“時代”だった。『ハリー・ポッター』とは時代背景も国も大きく異なるので、登場するキャラクターたちの性格やデザインもまったく毛色の違うものになっているんだ。まずは、J・K・ローリングがなぜ舞台をこの時代に設定したのか理解する必要があった。

ーー本作は、1926年のニューヨークが舞台です。現代のイギリスが舞台の『ハリポッター』と比べて、魔法道具等のデザインにも変化があったと思います。

ピエール:僕らにとって、1920年代のニューヨークは非常にイメージしやすかった。なぜなら、当時はニューヨークの歴史の中で最も煌びやかで、建築物や身の回りにあるもののデザイン性が際立っている時代だったからね。脚本を読んだときは、そんな賑やかな雰囲気に満ち溢れているニューヨークに、風変わりな英国の魔法使いを放り込むというアイデアが、とても魅力的に思えたよ。ニュートが混沌とした世界に巻き込まれていく展開も、いかにもJ・K・ローリングらしくて面白い。小道具に関して言うと、今回はセット撮影がほとんどであったため、当時の街を再現する必要があったんだ。舞台となるセットのデザインが僕らにとって一番のチャレンジだったし、仕事の半分以上はそこに力を注ぎ込んだと言える。ニューヨークに限った話ではないが、当時はアールデコ調のデザインが流行っていたので、その影響が色濃くでていると思うよ。

ーー魔法道具のデザインのアイデアはどんなものから生まれてくるのですか?

ピエール:脚本に書かれているものは、J・K・ローリングのアイデアと言える。僕から提案することもあるが、どちらかというと僕らはファシリテーター的な立ち位置であり、みんなで考えだしたコンセプトやデザインを実現させるために、どのような素材や手法を使うのか考えていくことが重要なんだ。そのため、僕個人がなにかにインスパイアを受けて、デザインを作り上げたものは少ない。監督やプロデューサー、プロダクションデザイナーが、まず作品の全体像を描き出していき、それらに対して我々を含める大勢のスタッフが議論し、協力し合いながら作り上げていくものなんだ。

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ーー魔法道具には、その道具を使用する魔法使いの性格が現れると思います。ニュートの場合は、どんなところを意識しましたか?

ピエール:ニュートはとにかく魔法動物好きで、その魔法動物をケアすることに力を注いでいる人物なんだ。自分の使用する道具のデザインや素材には無頓着で、あくまで実用的なものとしか考えていない。道具の手入れもまったくしないので、その“くたびれた”感じを出すことに意識を置いたね。特にニュートの性格を象徴しているのは杖と言える。柄の部分に貝殻を使用していたり、動物の骨などを使用しないところが、彼の動物愛を語っている。それに、ニュートが捕まえた魔法動物を入れておく魔法のトランクも、映画ならではの工夫を要する道具なので面白いと思うよ。ここに持ってきているトランクはマグル(人間)仕様になっているので空っぽだが、劇中ではトランクの中身そのものが大きなセットになっているんだ。

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ニュート・スキャマンダーの杖
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ニュート・スキャマンダーのトランク

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