THE DAMNEDの姿勢は、パンク以外の何ものでもない! ISHIYAが『地獄に堕ちた野郎ども』を観る

ISHIYAの『地獄に落ちた野郎ども』評

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 一方で、本作ではメンバー間の不仲問題にも踏み込んでいる。オリジナルメンバーであるブライアン・ジェームス(Gt.)、ラット・スキャビーズ(Dr.)と、キャプテン・センシブル(Gt.)、デイヴ・ヴァニアン(Vo.)の仲が良くないのだ。バンドには様々な問題が起き、メンバーの関係性が悪くなることも多々ある。本作で触れられている問題は、バンドマンであれば誰もが理解できるだろう。このドキュメンタリーがリアルなのは、ただ彼らを絶賛するだけの内容ではないからである。2組に別れて同じ曲を別の場所で演奏するほど、彼らの間の確執は深い。歴代メンバーが揃ったツアーも行なったが、オリジナルメンバー全員が揃っての演奏は、1991年以来実現していない。

 1986年の初来日の際には、筆者も豊島公会堂に観に行ったのだが、その時のメンバーにはキャプテン・センシブルがいなかったものの、デイヴ・ヴァニアンを中心としたメンバー編成であった。ラット・スキャビーズのドラムに度肝を抜かれ、デイヴ・ヴァニアンの歌唱力とドラキュラ風のメイクとコスチュームを初めて目の当りにできた素晴らしいライブだった。映画を観ると、あの編成のTHE DAMNEDを味わえたのは、非常に貴重な体験だったことがわかる。

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 その後、THE DAMNEDは一時解散状態であったが、THE DAMNED名義ではなく、キャプテン・センシブルとデイヴ・ヴァニアン名義で来日したのを皮切りに、THE DAMNED名義でも幾度か来日公演を行なっている。そのあたりの経緯も、本作には収められているので、見逃すわけにはいかない。ラット・スキャビーズが、内幕を説明する際に見せた涙には、誰しもが深く心を動かされるのではないだろうか。

 バンドに様々な確執はつきものだ。それを惜しげも無くスクリーンにさらすTHE DAMNEDの姿勢は、パンク以外の何ものでもない。世界で初めて、パンクバンドとしてシングルとアルバムを発売した彼らは、今も変わらずに突き進んでいる。60歳を越える年齢となったキャプテン・センシブルが、作中でふと言った「いつか当たるさ」という言葉に、永遠の“夢見る不良少年”の心情を見た。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

『地獄に堕ちた野郎ども』予告編
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■公開情報
『地獄に堕ちた野郎ども』
9月17日(土)より、渋谷HUMAXシネマにてレイトショー
監督・製作・脚本・撮影・編集:ウェス・オーショスキー
出演:THE DAMNED(キャプテン・センシブル、ラット・スキャビーズ、デイヴ・ヴァニアン、ブライアン・ジェイムス、ローマン・ジャグ、ブライアン・メリック、ポール・グレイ)、デイヴ・ガーン (Depeche Mode)、フレッド・アーミセン (俳優/ミュージシャン)、ミック・ジョーンズ(The Clash)、レミー・キルミスター(Motorhead)、イアン・マッケイ(Minor Threat/Fugazi)、ビリー・アイドル、ジェシー・ヒューズ(Eagles of Death Metal)、クリッシー・ハインド(The Pretenders)、ニック・メイスン(Pink Floyd)、グレン・マトロック(Sex Pistols)、キース・モリス(Black Flag/Circle Jerks/OFF!)、クリス・ステイン(Blondie)、ジェロ・ビアフラ(Dead Kennedys)、ゲイ・アドヴァート(The Adverts)、クレム・バーク(Blondie)、ジャン=ジャック・バーネル(The Stranglers)、ルー・エドモンズ(P.I.L./The Damned)、スティーヴ・ディグル (Buzzcocks)、ジャック・グリシャム(T.S.O.L.)、チャーリー・ハーパー(U.K. Subs)、デクスター・ホーランド(The Offspring)、ジム・ジョーンズ(Jim Jones Revue)、ドン・レッツ(映画監督/ミュージシャン)、ジョン・モス(Culture Club/The Damned)、バズ・オズボーン(The Melvins)、TVスミス(The Adverts)、ジミー・アシュハースト(Buckcherry)
提供:キングレコード
配給:ビーズインターナショナル
宣伝協力:ディスクユニオン、フウドブレイン
協力:ビクターエンタテインメント
2015年/アメリカ映画/110分/ビスタサイズ/原題:THE DAMNED:DON'T YOU WISH THAT WE WERE DEAD
(c)2015 Damned Documentary LLC.
Photo by Ian Dickson
公式サイト:DAMNEDDOC.JP

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