『君の名は。』宮水三葉の声優、上白石萌音はなぜ支持される? 新海誠も絶賛する声の表現力

『君の名は。』上白石萌音の魅力

 8月26日に公開され、オープニング3日間で動員95万9000人、興行収入12億7700万円というすばらしい数字をたたき出したアニメ映画『君の名は。』。『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』などアニメファンから高い支持を受けていた新海誠監督の最新作ということで、注目度は高かったが、予想を大きく上回る好スタートを切った。大ヒットの要因はさまざまあるが、ここでは主人公の一人、宮水三葉の声を努めた女優・上白石萌音の魅力に迫る。

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宮水三葉

 スタジオ・ジブリ作品や細田守監督作品など、ボイスキャストが発表されるたびに大きな議論となる俳優による声の出演。否定的な意見があがることも多いなか、立花瀧役の神木龍之介や上白石への評価は高い。神木自身はこれまでもアニメーション作品への声優経験はあるが、上白石に関しては、細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』以来2度目で、主演を務めるのは初めてだ。

 上白石演じる三葉は、山深い田舎町に住む女子高生。東京への憧れを強く抱いていると、都会の男子高校生になる夢を頻繁にみるようになる……という役柄。つまり、上白石に近い等身大の女子高生(方言交じり)と、東京男子の二つのキャラクターを表現することが要求される、非常に難易度の高い主人公だ。

 劇中、上白石は、方言交じりのホンワカした佇まいを見せつつも芯の通った女子高生と、東京に住むちょっとクールな男子高校生を、三葉という同一キャラクターとして違和感なく演じ切っている。声優としての力量は未知数だが、キャラクターに感情移入させる表現力は存分に持ち合わせている。

 声優に挑戦する若手俳優が「声だけで感情を表現するのは非常に難しかった」というニュアンスの感想を述べることは多い。もちろん実際は“声だけ”で表現しているのではなく、アフレコの際には、声の他に表情や動作、視線などを駆使してアニメキャラクターに息を吹き込んでいるのだろう。その意味では、テクニックはもちろんだが、演技力も非常に重要な役割を占める。

 上白石の声質の美しさは、オーディション時に新海監督が一発でほれ込んだというほど奥行きのあるものであるが、演技という面でも、若手ながら『舞妓はレディ』では歌やダンスを交え、舞妓を目指す地方からやって来た女の子を好演。さらに『ちはやふる』では呉服屋の娘・大江奏を体全体でコミカルかつ繊細な演技を披露した。映像ばかりではなく、ミュージカル『みえない雲』や『赤毛のアン』で主演を務めるなど、声、表情、セリフ、動きというすべてを使いダイナミックに人物を表現しており実績は十分だ。

 自身もインタビューで「映像の繊細なお芝居や人の心を画面から伝えていくことに磨きをかけたい」と語る一方で、動きや声で表現する舞台やミュージカル、特に歌の魅力を熱く語るなど、総合的な表現力の重要性を十分に理解しているようだった。神木にも共通するが、声という部分にとらわれず、しっかりと役柄を理解し、立体的に演じようする姿勢が、キャラクターに説得力を持たすことができるのだろう。

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