80年代カルチャーを詰め込んだ『シング・ストリート』、個性溢れるファッションの魅力
ほかにも、ミュージック・ビデオを撮影するシーンの衣装とメイクは、80年代に流行したニューロマンティックファッションそのものだ。中世ヨーロッパのような衣装と派手な化粧が、当時流行していたUKロックバンドを彷彿とさせる。
衣装デザイナーのティツィアーナ・コルヴィシエリは、「80年代はお金がなかったから、 新しい洋服を買うことはできなかったわ。たとえお金があって、最新流行の洋服を買いたいと思っても、 ダブリンでは手に入らなかった。若者は常にチャリティーのお店や古着屋に足を運び、時には現代風のファンキーな洋服に見せかけるために自分たちで作り替えたの。それに、70年代のお古もたくさんあったから、親や兄妹の洋服ダンスを漁ったりしてね。アイディアの宝庫だったことは確かね」と当時のライフスタイルを研究し、衣装に反映したことを明かしている。(引用:公式サイト)
少しずつ形は変わっていくものの、流行は何度も繰り返すため、80年代のファッションは現在も根強い人気を誇る。だからこそどこか懐かしくもあり最先端のようにも感じさせる本作の衣装は、観ているだけで心が踊る。さらに、小物やインテリアなどの細部にもこだわりを感じ、お洒落であると同時に、物語によりリアリティーと深みを与えている。いつの時代も音楽とファッションの関係性は強い。どちらも丁寧に描かれている『シング・ストリート』は、そんな80年代の空気を味わうのに打ってつけの一作といえよう。
(文=戸塚安友奈)
■公開情報
『シング・ストリート 未来へのうた』
ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次公開中
監督・脚本:ジョン・カーニー
出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、エイダン・ギレン、マリア・ドイル・ケネディ、ジャック・レイナー、ルーシー・ボーイントン
配給:ギャガ
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公式サイト:gaga.ne.jp/singstreet