ディカプリオ、悲願のアカデミー主演男優賞を手にした理由 “逆境”と“家族愛”で新境地へ
若干19歳で初めてオスカーにノミネートされ、それをきっかけに破竹の勢いでハリウッドスターへの階段を上っていったディカプリオが、これまでアカデミー賞から冷遇されてきた理由、それはやはり賞を意識しすぎた点にあると思う。
狂気じみた迫力の演技で圧倒させた『アビエイター』、言葉巧みに投資家をだまし、巨万の富を得た若き株式仲介人を軽妙に演じた『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』には共通している点がある。それは(アカデミー賞ノミネートに至らなかった出演作品にも共通することだが)ディカプリオの演技に力が入りすぎているという事だ。心の病を抱えた主人公を、眉間に皺を寄せながら演じた前者はともかく、後者に於いてはコメディ色の強いストーリーにも関わらず、演技に力が入りすぎている。上映時間の長さも観客の体力を消耗させたが、ディカプリオの演技の力み具合が、実話ベースのコメディとしての軽さを消し去ってしまった。
『レヴェナント:蘇えりし者』で“愛する息子を失った父親”という役柄を演じ、見事に俳優としての幅を広げる事に成功したディカプリオ。アカデミー賞を受賞したことが単純に俳優としての成功に繋がらないハリウッドで、今後どういう立ち振る舞いをみせていくのかが、彼に残された次の課題だ。
■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。
■公開情報
『レヴェナント:蘇えりし者』
4月22日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか 全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
(c)2016 Twentieth Century Fox
(c)Getty Images