いじめを“見て見ぬふり”することは罪かーー『十字架』が訴えるメッセージ

『十字架』が訴えかけるメッセージ

 ただ、見て見ぬふりをするような生温い人間こそ、人生を器用に生きているような気がするのは私だけだろうか。実際映画の中でも、被害者家族がずっと荒んだ心を引きずりながら生活しているのに対し、罪悪感を感じながらも、事実に蓋をし、要領よく幸せな家庭と生活を築いている主人公ユウ。表面上は幸せに見える。でも元を正せば、臭いものに蓋をして生きているだけに過ぎない。臭いものに蓋をして放置しておけば、ずっと臭いままそこに存在するだけだ。つまり物事の本質を見ずに、幸せなふりを続けているだけなのだ。彼らは見えない十字架を背負って生きている。本人は気づいていないかもしれないが、実は世の中にはこういう人間は沢山いる。

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(c)重松清/講談社/(c)2015「十字架」製作委員会

 ただし、表面上幸せに見えようと、人生は平等なのだ。このような人たちには残念ながら、この先何らかの罰が待ち受けているはずだ。気づかなければ気づくまで、それは追いかけて来るだろう。だからこそ人は悔いのないよう、自分の心に誠実に生きていかなければならない。この作品はいじめ、自殺という究極を題材にしているが、見方を変えればいかようにもとれる。私自身も一人の人間として、不誠実な生き方に流されぬよう、自分というものをしっかり持って生きていこう、そう心に誓った。

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■大塚 シノブ
約5年間中国在住の経験を持ち、中国の名門大学「中央戯劇学院」では舞台監督・演技も学ぶ。中国・香港・シンガポール・日本各国で女優・モデルとして活動していたが、芸能以外の活動を広めるため芸能活動を一時休止。今年から新たなビジネスを始め、中国等での活動も再開予定。

■公開情報
『十字架』
公開中
監督・脚本:五十嵐匠
出演者:小出恵介、木村文乃、富田靖子、永瀬正敏
原作:重松清「十字架」(講談社文庫刊) 
配給:アイエス・フィールド
(c)重松清/講談社/(c)2015「十字架」製作委員会
公式サイト:www.jyujika.jp

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