ウィル・スミスらによるアカデミー賞批判の背景 映画業界は多様性を実現できるか?

 第88回アカデミー賞の俳優部門にノミネートされた20人が全て白人だったことを受け、アフリカ系米国人の映画監督スパイク・リーや俳優ウィル・スミスらが、来月28日に開かれる授賞式をボイコットすることを発表。アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーはこうした意見に対して22日、賞の投票権を持つ会員について、2020年までに女性や黒人などマイノリティの数を倍に増やす計画を明らかにするなど、波紋を呼んでいる。

 一方でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシャーロット・ランプリングは、黒人監督や黒人俳優によるアカデミー賞のボイコットは「白人に対するレイシズム」と発言し、物議を醸している。

 一連の流れについて、専門家はどのように見ているのか。米国のドラマ・映画事情に詳しいライターの今祥枝氏に話を訊いた。

「アカデミー賞のこうした体制に対する批判は以前からあって、たとえば同性愛を題材にした2005年の映画『ブロークバック・マウンテン』が同年作品中最多の8部門にノミネートされたものの、実際には3部門の受賞にとどまった際にも、ダイバーシティ=多様性への意識の足りなさが指摘されていました。一方でテレビ業界に目を向けると、昨年、ヴィオラ・デイヴィスが『殺人を無罪にする方法』で黒人女性として初めてエミー賞主演女優賞を獲得したほか、LGBTを題材にした米Amazonのオリジナルドラマシリーズ『トランスペアレント』がゴールデングローブ賞のテレビ・コメディー部門で最優秀作品賞と最優秀主演男優賞を獲得するなど、ダイバーシティを実現する土壌が育まれていることが伺えます。スティーブン・ソダーバーグのような優れた監督は、だからこそテレビ界へと活躍の場を移したのであって、才能の流出という視点から見ても、今回の批判によって映画業界の閉鎖性や保守性が改めて露呈したことは意義深かったのではないでしょうか」

 ただし、今回ノミネートされている作品の評価については、騒動とは切り離して考えるべきだと同氏は続ける。

「たしかにアフリカ系アメリカ人のマイケル・B・ジョーダンが主演を務めた『クリード チャンプを継ぐ男』や、同性愛を描いた『キャロル』などについては、その評価に異論もあるでしょう。しかし、それはダイバーシティの問題とはまた別の話であって、少なくとも今回の騒動によってノミネートされた作品が貶められることになってはいけないと思います。ただ、結果としてそういった作品が浮上してこなかったのは、やはりアカデミー賞の選出の仕方に歪みがあったからだと思いますし、それは改善されて然るべきだと考えます。2013年にアフリカ系アメリカ人女性であるシェリル・ブーン・アイザックス氏がアカデミー賞の会長に就任した際にも、改革を推し進めようという意思はあったはずなので、今回の批判を正しく受けてアカデミー賞が真のダイバーシティを実現することを期待したいです」

 また、シャーロット・ランプリングの発言に対しては、次のように指摘している。

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