スーパーヒーローをリアルに描くと……? 『デアデビル』が見せる濃密なクライムドラマ
各エピソードに必ず組み込まれるアクションパートの演出にも通常のドラマの枠を超えた野心が感じられる。例えばエピソード2のクライマックス、ビルの狭い廊下で繰り広げられる約5分間にわたるワンシーン・ワンショットの戦いは、コリアンバイオレンス『オールド・ボーイ』の名シーンを彷彿ともさせる渾身の演出だ。他にもボーリング場での乱闘、車ドアでの虐殺、燃える忍者(!?)と新鮮な見所は多い。
本ドラマは、さまざまな人種が集う大都市ニューヨークのリアルを根底にしている。舞台となる「ヘルズキッチン」というのはマンハッタン内に実在するエリアで、今でこそ高級マンションやレストランがひしめいているが、以前はその名“地獄の台所”の通りギャング団による犯罪が横行していた。製作陣はそんなかつての荒廃した雰囲気を再獲得すべく、実際のヘルズキッチンではなくマンハッタンから橋を渡ったブルックリンやクイーンズのロングアイランドシティを主な撮影ロケーションとした。これらのエリアが今でも漂わせる静かな危うさがフィクションの迫真性を高めていることは間違いない。また劇中には黒人、ヒスパニック、ロシアン、チャイニーズ、ジャパニーズといった様々な人種が登場する。かつてのアメリカンドラマであればその会話は英語で統一されていたであろうが、本作では各々の言語をそのまま取り入れ、基本的には英語字幕も出さない選択をしているという点はリアル志向ならではだ。
こうしたハイクオリティの根源となっているのは、企画者であり製作総指揮の1人ドリュー・ゴダードだろう。『エイリアス』『LOST』などのドラマシリーズや、ゾンビ映画『ワールド・ウォーZ』、日本では2月5日から公開されるリドリー・スコット監督最新作『オデッセイ』などの脚本家であり、2011年にその斬新さで注目を集めたホラー映画『キャビン』の監督を務めた才人である。マーベル版新『スパイダーマン』スピンオフを任せられたともアナウンスされているドリューは、今後ハリウッド映画界の中心的人物ともなっていくことだろう。
シーズン2の製作が決定している『デアデビル』だが、マーベルファンのみならず、ダークかつハードなクライムドラマを切望していた方にもオススメできる。
■嶋田一
主に映画関連ライター。1987年生まれ。今後も精力的に執筆活動。
■ドラマ情報
『デアデビル』
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