ここから新しい時代が始まるーー河原一久氏が語る『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の展望

 12月18日18時30分の公開まで、いよいよ1週間を切った『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。同シリーズの字幕監修を手がけてきた河原一久氏が、あらゆる情報を集めて、『スター・ウォーズ』(以下、『SW』)を深堀りし、分析した書籍『スター・ウォーズ フォースの覚醒 予習復習最終読本』が去る11月18日に刊行された。同書は、『予習復習最終読本』というタイトルのとおり、ビギナーからマニアまで楽しめる、『SW』の現在過去未来について書かれた内容になっている。リアルサウンド映画部では、河原一久氏にインタビューを行い、同書の執筆意図や、『SW』現象の特殊性、さらには、公開を間近に控える『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』がどのような作品になるのか、話を聞いた。

「そのときどきの時代が必ず反映されるのが『SW』」

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河原一久氏

――本書を読んで印象に残ったのは、「過去作がいかにすごかったのか」よりも「新作がどうなのか」、そして「今後どうなっていきそうなのか」に多くのページを割いている点でした。

河原:16年前……99年に『エピソード1』が公開されるときなら、過去作の話だけで良かったと思います。77年から83年までの三部作が、当時の人々にとって、いかに衝撃的だったのかっていう。だから、当時はそういう本を、僕も書いていたんですけど、そこからさらに年月が経っているので、もうそのテイストでもないなって思ったんです。

――というと?

河原:もっと引いた観点、もっと客観点な形で書いたほうが、多くの読者に届くと考えたんです。いまは刺激的なコンテンツがほかにもあるので、「当時の『SW』はこんなすごかったんだよ」って言っても、「ふーん、すごいものなら他にもあるから」となってしまう可能性が高いですよね。

――そうかもしれないです。

河原:だから、そうじゃないやり方で、アピールしたほうがいいと思って。端的に言えば、今回の新シリーズというのは、昔を懐かしむためのものではなく、ここから新しい時代が始まるっていうことなんですよ。だから、最終的に『予習復習最終読本』というタイトルになりました。そもそも最初に「どんな感じの本にしようか?」という話し合いをしたときに、今回の本はきっと「SW新時代」というか、そういう感じの本になるだろうし、このタイミングでは、そういうものをやるべきだっていう話は、編集者ともしていたんですよね。

――ルーカスフィルムがディズニーに買収されてから、初めての作品になるわけで……そういう意味でも、新時代が始まるわけですよね。

河原:そう。だから、逆に言うと、僕たちが好きだった『SW』はこういうもので、『SW』っていうのはこうあるべきだよねっていう本には絶対したくなかった。たとえば、この本の中にも書きましたけど、今度の『SW』はレイっていう女の子が主人公で、三部作ずっと彼女が主人公になるわけです。で、昔からのファンのなかには、それを「うーん」って思う人がいるかもしれない。「女の子が主人公か」って。でも、そんなことは全然問題じゃないんですよ。

――なるほど。

河原:とはいえ、僕もかつては結構保守的で……一作目の『SW』が公開されたとき、その面白さに衝撃を受けつつも、あの勝気で男勝りなレイアっていうヒロインには、正直ちょっと違和感があったんです。もっと普通のお姫さまでいいのにって。ただ、あれは当時のウーマン・リブ運動の流れを汲んだ、新しいプリンセス像だったわけで、そこがやっぱり『SW』が新しいと言われるところでもあった。

――当時の社会的な文脈も背景にあったのですね。

河原:そうです。そして、今回は、ついに女性が主人公になると。もはや、そういう時代になったわけです。女の子が主人公のスペースオペラなんて、昔だったら全然考えられなかったけど、それをやるのが『SW』だし、SF映画とはいえ、そのときどきの時代が必ず反映されるのが『SW』なんです。クリエイターたちだって、その時代をリアルタイムで生きているわけですから。

――その意味で、今回の新シリーズは、過去ではなく現在に向けられた作品になるはずだと。

河原:と思いますよ。レイをはじめ、黒人のフィン、そしてポー・ダメロンという今回登場する新しいキャラクターたちは、みんな20代とか30代じゃないですか。となると、やっぱり彼らの同世代の人たちの共感値が高いだろうし、10代の子や幼い子どもたちは、きっと彼らに対して、身近な憧れを感じると思うんです。そこで「歳をとったハン・ソロがいいよね」とは、やっぱりならないわけですよ。

――オリジナル・キャストが30数年ぶりに再登場することに、古参のファンは歓喜するでしょうが、物語の中心となってくるのは、やっぱり若い登場人物たちであると。

河原:もちろんです。最初の『SW』をリアルタイムで観た世代なんて、これからどんどんいなくなっていくんですから。最初はいろいろうるさいかもしれないけど、ヨーダやオビ=ワンのように、やがて霊体になっていくんです。

――(笑)観る側も若い人たちが主役になっていくのが、今回の新シリーズなんですね。

河原:それは間違いないと思います。だから、今回の新シリーズは、残念ながら古参ファンにとっては「君たちの時代は、もう終わっているよ」という話になるのかもしれない。これからはもう、君たちの子どもたちの時代だよ、と。

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