『監獄学園-プリズンスクール-』のエロス描写が伝える、深夜番組スピリッツ
キヨシを演じる中川大志は『家政婦のミタ』などでその演技力が注目され、今後多くの女性ファンを魅了していく正統派美形俳優だ。インタビューで「17歳の自分が、こういう(エロスを扱う)作品や役に挑戦できるのは貴重な機会」と発言していたように、学園ドラマでは役の年齢よりも年上の俳優がキャスティングされる傾向があるなか、中川はほぼ同年代の役に挑戦する。素の中川よりも鼻の下が伸びているように見え、美形俳優の面影を見事に払拭している芝居が見事である。
また、キヨシに木陰での放尿姿を目撃されて以来、キヨシに対しての恋心を暴力でしか表現できない重要女子キャラの花に、同世代の女優とは一線を画す覚悟と資質の持ち主・森川葵をキャスティング。肝の据わった彼女が、第2話以降に登場する花の放尿シーンや、キヨシと花のキスシーンをどこまで表現するのかが俄然楽しみだ。
もちろん本作のエロチシズムは、ネットに転がっているエロ動画に比べたら爽やかとすら言える範囲のエロスだが、今の時代にテレビでエロスをストレートに表現しようとするスピリットが称賛に値する。共同脚本と監督を務めるのは、『片腕マシンガール』の鬼才・井口昇。彼ら作り手を突き動かすのは原作への敬意はもちろんのこと、親が寝静まった真夜中にエロスへの期待を胸に洋画や『11PM』を見ていたあの頃へのオマージュ、つまりは深夜のテレビ番組への愛情のような気がしてならない。
■須永貴子
インタビュアー、ライター。映画やドラマを中心に俳優や監督、お笑い芸人、アイドル、企業家から市井の人までインタビュー仕事多数。『NYLON JAPAN』『Men’s EX』『Quick Japan』『Domani』『シネマトゥディ』などに執筆。