奈須きのこ「未完の小説」が30年越しに完成? 舞台『刀剣乱舞』の戯曲にも注目のラノベランキング

 Rakutenブックスの7月の週間ライトノベルランキング(7月13日~19日)は、奈須きのこ『魔法使いの夜 上』(星海社FICTIONS)が1位。アニメにもなった小説『空の境界』や、ゲーム『月姫』『Fate/stay night』のシナリオで知られる作者による「未完の小説」として伝わっていたもので、2012年にゲーム化され、2026年11月には『空の境界』『鬼滅の刃』のufotableによってアニメ化されることも決まっている。

 今回の小説版は、長くファンが待ち望んでいたもので、『月姫』の魔法使いである蒼崎青子が主人公として登場し、『空の境界』の蒼崎橙子も出てくるなど、作者による一連の作品の源流とも言われている。それだけに、8月27日の発売前からランキング登場となった。イラストはゲーム版『魔法使いの夜』でキャラクターデザインや総作画監督などを務めたこやまひろかずが担当。全3巻で3ヶ月連続刊行予定で、しばらくランキングを賑わせ続けそうだ。

 2位は、雨森たきび『負けヒロインが多すぎる9』(ガガガ文庫)が、TVアニメの2期が決まるなど衰えないシリーズ人気を見せてランクイン。ツワブキ高校生徒会長の放虎原ひばりとはいとこで、同じ生徒会で会計を務めていた桜井弘人には水島小春という恋人がいる。小春は桜井くんとの仲をより深めようとして飛騨に温泉旅行に行くことを企て、そこに温水和彦と八奈見杏菜、そして放虎原先輩も加わった5人で出かけるが、行った先で温水と八奈見さんにとんでもない事態が発生する。

 八奈見さんが旅行先の名物の地産地消に励むとか、ご飯をおひつでいっぱい食べたといったこととはまた違った展開に青春ならではのドキドキが浮かぶが、一方で、親同士の仲違いが子供にもたらされる影響も書かれて、田舎のしがらみに縛らたくない子供の心をヒリヒリと刺激する。誰が新たな負けヒロインになったのかも含めて読みどころの多い新刊だ。

 3位は、末満健一「戯曲 舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ」(星海社FICTIONS)。タイトルどおりにゲーム『刀剣乱舞ONLINE』を発祥とした舞台から、2019年に上演された『慈伝 日日の葉よ散るらむ』を脚本家が戯曲としてまとめたもの。山姥切国広や山姥切長義が登場。会場ごとに出演が違った刀剣男士の小夜左文字、骨喰藤四郎、不動行光、歌仙兼定についても登場する場面を収録していて、すべての会場を回れなかったファンも戯曲としてそれぞれの登場を楽しめる。8月19日発売。

 4位は、9月10日発売予定の佐島勤『続・魔法科高校の劣等生メイジアン・カンパニー12』(電撃文庫)で、5位は、9月30日発売予定の中村颯希 『ふつつかな悪女ではございますが13 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜』(一迅社ノベルズ)。共に人気シリーズの最新刊としてランクインした。

 6位の川原礫『ソードアート・オンライン マテリアル1 シュガーリィ・デイズ』(電撃文庫)も、人気シリーズに属する新作だが、続編とは違い本編を突き詰めた1冊。かつて《アインクラッド》七十五層の攻略が始まった時に、キリトとアスナが結婚して過ごした甘い日日を突っ込んで描くという、ファンサービスが詰まったストーリーを楽しめそう。設定が分厚くキャラも強力な作品では細部に踏み入っても面白い作品を生み出せる恒例と言えそうだ。8月7日発売予定。

 7位は、絵本ながらランキングに登場した麻生かづこ『先生! おかわり禁止って へんじゃない?』(金の星社)。「バレンタインデーのチョコ禁止」「男子の長いかみ禁止」「おたんじょうび会禁止」「わすれ物をしたら、給食のおかわり禁止」といった数々の禁止事項に疑問を抱いた子供が議論を始める展開が、世慣れてしまった中高生や大人に逆に民主主義の原点を思い出させてくれるかもしれない。7月25日発売予定。

 8位は、『わたしの幸せな結婚』の顎木あくみによる新シリーズ第2作『宵を待つ月の物語 二』(富士見L文庫)。権力を握る一族の当主に見初められなかった夜花という名の少女が、千歳という謎めいたところのある少年からその「まれびと」としての力を見いだされ、術士の仕事の手伝いをするという話で、新刊では邪気が渦巻く廃村へと出向いた夜花に何かが起こる。人気のシンデレラ婚的な設定を外したスタート地点から始まり、運命を切り開いていく少女の姿にひきつけられるシリーズだ。9月15日発売予定。

 9位は、三嶋与夢『俺は星間国家の悪徳領主!12』(オーバーラップ)で、こちらも人気シリーズの最新刊。10位は、2025年12月の発売ながら、7月17日にアニメ映画が公開されたことからランクインした真戸香『夏と花火と約束と』(ガガが文庫)。進学した高校で煌という名の少女から「ずっと君に会いたかったです」と声をかけられた誠は、煌が持っていた自分が描いていたという絵の謎を探ろうとして、驚きの事態に巻き込まれそこで絵の真相を知る。

 ボーイ・ミーツ・ガールにSF的な要素を入れ、さらに戦争という悲劇を超えて繋がれた思いに触れさせて涙を誘うストーリー。映画は迫る空襲や、空をきれいに彩る長岡大花火大会のダイナミックな描写があって滂沱必至だ。長岡大花火大会をテーマにしたアニメを作りたいと企画したプロデューサーが、物語を書いてもらいそれが先に出版され、ようやくアニメ公開に至ったという興味深い成り立ちの作品。どちらから触れても今をしっかりと生きるよう、二度と悲劇は起こさないようにしようといった気持ちになれるはずだ。

※参考:Rakutenブックス「ライトノベル 週間ランキング」

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