夢枕獏「キマイラ・吼」と菊地秀行「吸血鬼ハンターD」のシリーズ最新刊が登場! 6月の注目ライトノベル
6月のライトノベルはレジェンド級の2作が登場。ひとつ夢枕獏による『キマイラ16 呪殺変』(ソノラマノベルス)で、1982年刊行の『幻獣少年キマイラ』から始まる「キマイラ・吼」シリーズの最新刊。体調面から未完となることを懸念した作者が、先に完結編を執筆して2025年に『キマイラ聖獣変』として刊行した。『呪殺変』ではその物語へと進む展開が改めて描かれていく。6月19日発売。
もうひとつは、菊地秀行の『吸血鬼ハンターD-殺戮貴族』(朝日文庫)。こちらも1983年の『吸血鬼ハンター“D”』から43年にわたって描き続けられているシリーズの第45話で、吸血鬼を狩り続けているDの新たな旅と6人の貴族との戦いが、天野喜孝の耽美な表紙絵を得て綴られていく。6月5日発売。高千穂遙の「クラッシャージョウ」シリーズや富野由悠季によるTVアニメのノベライズ『機動戦士ガンダム』を送り出し、50年近くに及ぶライトノベルの歴史を開いたソノラマ文庫の看板だった2作の新刊が、令和の時代も読める幸せを噛みしめよう。
28年という歴史を刻み続けている上遠野浩平の「ブギーポップ」シリーズからも新刊が登場。6月10日発売の『ブギーポップ・クルシファイ リミットグレイの妖精逆説』(電撃文庫)は、末真和子が予備校で奇妙な紙切れと出会うことで起こる不思議な出来事が描かれそう。物語世界を濃密に描いてきた「キマイラ」シリーズや「D」シリーズとは世代が違い、時代の空気感を取り入れながら若い読者の心を捉え続けて来たシリーズが、21世紀も四半世紀が過ぎた今、何を描いているかに注目したい。
10年ぶりの新刊によって登場から15年目の完結を迎えるのが、白鳥士郎の『のうりん14』(GA文庫)。地方にある県立の農業高校を舞台に、生徒たちが繰り広げる農業と恋愛のハイブリッドストーリーは、TVアニメにもなってちょっとした賑わいを見せたが、同じ作者の『りゅうおうのおしごと!』が人気となったこともあっていったん中断。最新巻ではアイドルを辞めて農業高校に通っていた木下林檎がアイドルに復帰し、新興政党の女神に祭り上げられている状況で、畑耕作ら登場キャラたちが暴れ回るという。10年のブランクをどう処理しているのか気になるところだ。6月15日発売。
新作では、『86-エイティシックス-』の安里アサトによる『ヤエブキ機関 千万丈塔踏破録1』(電撃文庫)が注目の1冊。皇家直属の特務機関に所属する双子の術師が、帝都警備役の精鋭衛士・祭花と組み、邪教集団によるテロを防ぐために戦うというストーリー。苛烈な戦場に生きる少年少女の戦いを描き続けて来た作者が、和風テイストの世界でどのような物語と世界を描いているのかを確かめたい。6月10日発売。
『NHKにようこそ!』『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』といった青春の鬱屈を描いて、ひきこもり世代のトップランナーと呼ばれた滝本竜彦が、デビューから25年目にラノベレーベルから送り出す作品が6月18日発売の『燃え尽き吸血鬼の音楽』(ガガガ文庫)。ベートーヴェンに師事したり、ヴァンパイアハンターと戦ったりして来た吸血鬼のエリーだったが、燃え尽きてしまったようで川崎市にあるアパートで自堕落な日々を送っていた。そんなエリーが近所の女子高生に引きずられ、音楽活動を始めるというストーリーが迷っている人たちを導いてくれそう。
音楽物といえば、『三角の距離は限りないゼロ』の岬鷺宮による6月10日発売の『神懸かれ、キラーチューン。』(電撃文庫)も面白そう。絶大な人気を誇る音楽ユニットがギタリストをオーディションで選ぶことになり、100人の女性ギタリストたちが集まってくる。誰もが音楽センスに溢れた応募者の中に、Fコードすら弾けない水巻長閑という少女が混じっていたが、なにか見逃せないものを持っているらしかった。繰り広げられる音楽の才能をめぐるバトルに興奮できそうだ。
「デート・ア・ライブ」シリーズの橘公司は6月19日に『魔術探偵・時崎狂三の死亡届』(ファンタジア文庫)を刊行。不思議な力を秘めた魔術工芸品の時計を持つ者たちによる争いの渦中に起こる事件を、時間を戻る時計の力も使って解明していく特殊設定のミステリを楽しめそう。王城夕紀『バイ・タイム─整時士佐藤スバルの哀切─』(新潮文庫nex)は、高次生命体との遭遇から2年が経った世界で、絡まった“時”を修復する“整時士”の父と子の日々が描かれる。こちらは濃いSF成分を味わえそう。発売中。
「第2回オトナの小説大賞」という気になるコンテストで〈金賞〉受賞の『俺のスキルはラブホテル』(ダッシュエックス文庫)は、異世界召喚に巻き込まれたアラサーのバス運転手がスキルを得たものの、それが異空間にラブホテルの部屋を作り出すというエッチなものだったため王城から追放されてしまう。そして出会ったハーフエルフの少女と共にいったい何をするのか。想像するだけでドキドキしてくる。6月25日発売。
6月22日発売の白井ムク『風紀委員の破廉恥遊戯』(GCN文庫)もエッチ系で並ぶ1冊。なりゆきで風紀委員長になった主人公に、副委員長が破廉恥遊戯を仕掛けてくるようになり、そこに主人公の幼馴染みも負けてはいられないと絡んで来る。色欲をビンビンと刺激される展開が繰り出されそうだ。