『CUTiE』と「Cher」、なぜカプセルトイで復活? 宝島社トイズが“平成カルチャー”に注目したワケ
トレンドを夢中で追いかけた、平成の熱狂が手のひらサイズに――。
宝島社トイズからカプセルトイ第1弾として登場したのは、惜しまれながら2015年に休刊したファッション雑誌『CUTiE(キューティ)』を再現した豆本と、2000年代に一世を風靡したブランド「Cher(シェル)」のミニバッグキーホルダー。
雑誌の発売日を楽しみにしていた世代が“懐かしい”と感じるのはもちろん、Y2Kカルチャーブームを牽引する若い世代にも“新しい”感覚で受け入れられそうなアイテムだ。
そんな世代を越えて記憶と好奇心をつなぐこの企画は、どのようにして生まれたのか。開発の舞台裏、そして出版社発の玩具ブランドだからこそできる今後の可能性について。宝島社トイズの清水弘一氏に聞いた。
ページをめくるたびに、甘酸っぱい青春のトビラが開かれる
――早速、目の前に『CUTiE』の豆本とCherのミニバッグがあるのですが、これは当時を知る者としては「うわー!」と声を上げずにはいられない感動がありますね。ちょっと胸が痛いくらいです(笑)。
清水:ありがとうございます。いろいろと思い出のフタが開きますよね(笑)。当時ファンだった方はもちろんですけど、平成の文化に注目が集まっている今だからこそ、令和を生きるみなさんにも新鮮に映るのではないかなと思っています。
――あらためて、どのような経緯でこの『CUTiE』の豆本とCherのミニバッグをカプセルトイにすることになったのか、背景をお聞かせください。
清水:宝島社は2025年に玩具ブランド「宝島トイズ」を始動しました。出版社としてこれまで多くのブランドムックを手掛けてきた経験と、玩具ブランドとしての新たな挑戦のなかで、何かできることはないかと考えたときに、目に止まったのが街角にあるカプセルトイだったんです。もともとカプセルトイは子ども向けのものとして生まれましたが、最近では様々な企業とのコラボも話題になっています。海外からの観光客にも人気と知り、このチャンスに何かできないかと思いついたのがきっかけです。
――なかでも、『CUTiE』とCherを選ばれたのは?
清水:社内でもいろいろと検討した結果、「『CUTiE』を復活させたい」という声が非常に多くて。当初、雑誌のロゴチャームをカプセルトイとして出そうか、というアイデアもあったのですが、一方で、大切な思い出の『CUTiE』だからこそ「雑誌という形で復活してほしい」という声もあって。ならば、実際に読める豆本にしてカプセルトイにしようと行き着きました。
Cherさんについても、実は2017年に閉店されて、現在は残念ながらブランド自体がなくなっています。とはいえ、つい先日、このトートバッグを使っている方を街で見かけたんです。なんて丈夫なバッグなんだと感心したのと同時に、やっぱり今見てもすごくかわいいなと素直に思いました。なので、どうにかあの伝説的な人気を誇ったCherを、若い世代の人たちにもぜひ知ってもらいたいという気持ちで企画したんです。
――実際、形にするまではどのくらいの時間がかかったのでしょうか?
清水:約1年ぐらいかかりました。出版社の感覚としては数カ月で実現できるかと思ったのですが、いろいろと乗り越えなければならない壁がありまして……。まず、『CUTiE』のバックナンバーをすべてスキャンしてデータ化するところから始まり、どのページを使うのか。さらに、そこに載っているモデルさんや関係者にも許可をいただく必要もありました。
――今はモデルをしていない方にも、ご連絡をされたんですか?
清水:はい。連絡が取れる方には全員お声がけをして。ありがたいことに、連絡が取れたみなさんは、殆どの方がご快諾してくださいました。みなさん「豆本ができたらください!」と楽しみにしてくださっていたのも、うれしかったですね。なかには、芸能界をすでに引退されている宝生舞さんもいて。それでも「『CUTiE』なら」と言っていただいて。改めて愛されていた雑誌だったんだなと実感しました。
――これほど愛されたのは、なぜだったと思われますか?
清水:『CUTiE』は、女の子たちが“モテ”ではなく、自分がかわいいと思うものを着たり表現するという雑誌でした。もともと「クラブに行くとおしゃれな子がいる」という話から、クラブでスナップ写真を撮り始めたのが原風景で。創刊当時は音楽カルチャー発信のファッション誌だったと聞いています。全盛期には月2回発行というハイペースでありながら、贅沢なシチュエーションの海外ロケでの写真なども掲載していて、当時の雑誌業界の勢いも感じられますよね。
そんな『CUTiE』が切り拓いた宝島社としてのファッション誌のイズムが、『sweet』『InRed』『SPRiNG』などに細分化して受け継がれていったことにより、「もう一度世の中にインパクトを与えられるかを考えながら、しばらくお休みします」という言葉を残して、2015年8月11日発売号をもって休刊しました。奇しくも今回「豆本」での復活は、他の雑誌ではなかなかできないインパクトを与えるものになったのではないかと思います。
――『CUTiE』全盛期はSNSがありませんでしたが、代わりに雑誌がものすごいスピード感を持って情報を発信していましたよね。
清水:そうした時代の変化が見えるという意味でも、復活させる面白さがありました。しかし、だからこそどういう切り口で誌面をチョイスし、1冊の豆本として成立させるかが悩ましくもあったところでした(笑)。最終的に、吉川ひなのさん、宝生舞さん、篠原ともえさん、あんじさんという当時『CUTiE』モデルとして絶大な人気を誇った方々を表紙に、それぞれファッションシュートをセレクトし、1冊あたり16ページにまとめました。さらに、岡崎京子さんの漫画『リバーズ・エッジ』の一部も読める全64ページのスペシャル版を含めて、全5種のラインナップとなりました。
宝島社トイズだからできる、カルチャーを大切にしたなカプセルトイを
――Cherのトートバッグも当時、本当にたくさんの人が持っていましたよね。
清水:Cherさんとは2008年から2014年まで雑誌『sweet』の付録や、付録付きブランドムックとしてコラボさせていただきました。このトートバッグは、当時280万部を突破した爆発的人気アイテムです。Cherさんはもともと上質な生地感にとてもこだわっていたブランドでしたので、今回のミニバッグを作るうえでも素材や染めの工程にもすべてイチから作り上げる必要がありました。売値が決まっているカプセルトイならではのコスト感が、雑誌付録とはまた違った難しさでしたね。質感は担保しつつ、どこまで再現できるかが力の入った部分でした。
清水:ありがとうございます。やはり出版社だからこそ、各時代で社会を楽しませたり、驚かせたりした媒体があるので、まだまだいろんなことができそうだなという予感はしました。例えば、雑誌『宝島』の「VOW」という名物コーナー。読者からのおもしろ投稿を紹介するものなのですが、今も雑誌『sweet』で連載が続いており、書籍化もされているほど根強い人気です。バックナンバーで振り返る機会はなかなかないので、豆本という新たな形で当時の雰囲気を楽しんでもらうこともできそうだな、なんて思ったり。
あとは、『BANDやろうぜ』という1988年から2004年のバンドブームを牽引してきた雑誌も、アーティストのライブレポートやインタビューはファンとしてもまた見たいと思っていただけるんじゃないかなとか。バンドメンバー募集という掲示板のようなコーナーも、なかなか味わいがありました。他にも、競馬やプロレスなど、カルチャーを切り取った雑誌の豆本や、それに付随したグッズを復活させるというのも、面白そうですよね。
――通り過ぎた時代の景色だからこそ、再び形にする価値がありますね。
清水:もちろん、それを実現するためにはまたアーティストの方や読者のみなさんに快諾いただく必要もあるんですが……(笑)。でも、今回『CUTiE』モデルのみなさんやCherさんからは「また繋がることができてうれしい」というありがたいお言葉もいただいたんです。こちらとしても、そんなに幸せなお返事はないという気持ちでした。このカプセルトイをきっかけに、また新たな関係性が築かれたり、作品が生まれていくきっかけにもなりそうだなと胸が熱くなりました。
――それこそ『CUTiE』に携わっていた元編集部のみなさんも喜ばれたのでは?
清水:ええ。セレクトのタイミングで元編集長を筆頭に、編集スタッフたちにも声をかけて、どのページを入れたいかという意見を募ったんですけど、まあそれぞれに思い入れが強くてまとまらず(笑)。そういう個性が色濃いところも『CUTiE』らしさだったのかなと微笑ましく思いました。彼女たちの意見も参考にしつつ、やはり最終的には読者のみなさんの印象に強く残っているであろうページを中心にチョイスすることで落ち着きました。
――このカプセルトイのプロジェクトそのものがまるで同窓会のようだったんですね。
清水:それこそ、本当の同窓会に持っていってもらったら楽しいかもしれませんね! 雑誌を丸ごと何冊も会場に持っていったら「おいおい何の話をするつもりだ?」って警戒されそうですが(笑)、豆本とか付録のミニチュアなら「最近カプセルトイでこんなの見つけてさ!」なんて話のタネとしてはライトな入りでいいかもしれません。
――それは、盛り上がりそうですね。
清水:そうして同世代でわいわいと当時の思い出を語り合って盛り上がるのもいいですし、SNS時代を生きる世代と「平成の雑誌はこんな感じだったのか」なんて交流するアイテムになってくれたらうれしいです。
■商品概要
商品名:『CUTiE』豆本 (全5種)
販売価格:500円(税込)
サイズ(約):H50×W40mm
商品名:Cher ミニバッグキーホルダー (全5種)
販売価格:500円(税込)
サイズ(約):H65×W85×D35mm
※各商品とも2026年6月発売予定
※全国のカプセルトイ専用自販機で販売