『イクサガミ』に『ジョジョ』が与えた影響とは? 時代劇×デスゲームを生んだ漫画的想像力

  Netflixシリーズ『イクサガミ』が配信されてからおよそ3週間が経過したが、勢いは衰えるどころか加速している。配信初週に国内ランキングで1位、週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)で2位を記録し、続く2週目には世界1位に到達。さらには9カ国で首位を獲得する快挙も成し遂げている。

 なぜここまで多くの視聴者を惹きつけるのか、本稿ではあらためてその魅力を紹介していきたい。

 同作は、直木賞作家・今村翔吾の長篇小説を原作とする時代劇アクション。原作は『イクサガミ 天』『イクサガミ 地』『イクサガミ 人』『イクサガミ 神』の全4部作で構成され、2025年8月に発売された最終巻をもってシリーズ累計発行部数50万部を突破した。

 物語の舞台となるのは、明治初期の日本。腕利きの志士292名が、勝者に大金が与えられるという「蟲毒」に挑むストーリーだ。家族が病に倒れた主人公・嵯峨愁二郎は、一攫千金のチャンスを掴むため、苛烈な生存競争に飛び込んでいく。

 同作の特徴は、ジャンル的には時代劇でありながら、デスゲームやバトルロワイヤルに近い仕掛けを組み込んでいる点にある。というのも「蟲毒」はたんなる殺し合いではなく、厳密なルールに基づいた“遊び”なのだ。

 ゲームの目的は1カ月以内に京都から東京へ向かうというシンプルなもの。しかし参加者には各自1ポイントを付与された木札が与えられており、道中の宿場を通るためにはその都度既定のポイントを上回っていなければならない。すなわち参加者たちはお互いのポイントを奪い合いながら、先に進んでいく必要がある。

 そして、漫画・アニメ的なキャラクターの立て方をしていることも同作の大きな特徴だろう。たとえば主人公・愁二郎はかつて「人斬り刻舟」として恐れられた伝説の剣客であり、圧倒的な腕前をもつが、とある事情によって心に深い傷を負っているという味のある設定だ。

 さらに愁二郎が競い合うゲームの参加者には、素早い身のこなしから「疾風の安神」の異名をもつ警察官の安藤神兵衛、「公家の守護神」と呼ばれた美貌の剣士・菊臣右京、バーサーカーのごとき暴れ方を見せる「乱切り無骨」こと貫地谷無骨などが登場。ほかにも暗器を用いて戦う忍者、アイヌの凄腕弓使いなど、見た目も設定も個性的な人物たちが揃っており、それぞれの戦いの行方から目を離せなくなる。

 作品名を挙げて語るなら、時代背景や幕末の動乱で心に傷を負った登場人物といった設定は、和月伸宏の『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』を連想させられる。また原作者の今村は、登場人物が旅をしながら物語が進むという設定について、荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ラン』に影響を受けたことをインタビューで明かしていた。※1

 いわば時代劇にマンガ・アニメ的な想像力をミックスすることで生まれたのが、『イクサガミ』の世界観なのではないだろうか。

物語の魅力を支えるダイナミックなバトルアクション

 また予想が付かない展開も、同作の大きな見どころだ。とくにドラマ版では主人公・愁二郎役の岡田准一をはじめとして、玉木宏、伊藤英明、東出昌大、染谷将太など、主演級の豪華キャストが多数起用されている。そのためどの参加者が先に脱落するのか、予想するのが非常に困難だ。

 実際に物語の幕開けとなる第1話では、あの山田孝之が演じる安藤神兵衛という人物の身に衝撃の展開が巻き起こることに。この先、誰が死亡してもおかしくない……という緊張感を視聴者に与える効果を生んでいる。

 さらにドラマ版ならではの魅力としては、迫力あるバトルアクションにも注目したい。同作では今や日本を代表するアクション俳優となった岡田が、プロデューサー兼アクションプランナーを担当。リアルかつダイナミックな身体の動きを練り上げており、弓矢が放たれる場面ひとつとっても、息を呑むような緊張感が画面から伝わってくる。

 第1話で描かれる「蟲毒」の開幕バトルは、まさに圧巻。すべての参加者が入り乱れながらお互いに命を奪い合う様子が、臨場感たっぷりに描かれている。そしてその後の「蟲毒」は敗者がふるいにかけられ、腕が立つ参加者だけが残るため、よりアクションの迫力も増していくのだった。

 なお『イクサガミ』はコミカライズ版も発売されており、立沢克美による緻密な筆致によって、映像とはまた異なる迫力の死闘が描き出されている。実写で味わった世界観を、マンガならではの表現であらためて体感すると、作品の奥行きがより鮮明に立ち上がるはずだ。

 ドラマ版は原作のラストまで描ききっておらず、“第1章”として物語に区切りを付けている。これだけ世界中で話題を呼んでいる以上、続編の制作はおそらく確実だろう。さらに熱量が増していくことを期待して、続報を待ちたい。

※1 リアルサウンド「今村翔吾に聞く、『イクサガミ』で“明治時代のデスゲーム”を描いた理由 「荒唐無稽が許される最後の時代だった」」(https://realsound.jp/book/2025/11/post-2207041.html)

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