ねことペンギンの絵と言葉に癒される人続々! ベストセラー『君がいるから』人気が急騰した書店でのPR戦略

 SNSで爆発的な人気を誇るイラストを書籍化し、7万部超のベストセラーとなっているのが、まなつ&まふゆによる『君がいるから』(大和書房)だ。ねことペンギンのあたたかな友情を描いたイラスト&メッセージブックで、世代を問わず多くの読者の心をつかみ、大きな反響を呼んでいる。

 その成功の背景には、著者の発信力や作品の魅力はもちろん、出版社・大和書房による巧みな出版プロモーション戦略があった。SNSの話題作を、どのようにリアル書店での人気につなげたのだろうか。担当編集の渡邊真彩氏と、営業部プロモーション担当の中島新之助氏に、その背景について話を聞いた。

大和書房の営業部プロモーション担当の中島新之助氏と『君がいるから』の担当編集者・渡邊真彩氏。

ーー本書を企画した経緯を教えてください。

渡邊:最初は2023年の春頃にInstagramでまなつ&まふゆさんの作品を見かけたことがきっかけでした。当時はフォロワーが8.5万人ほどいて、とても素敵なイラストを投稿されていたんです。アナログの水彩画で緻密に描かれているので、スマホの小さな画面を通して見るだけでなく、紙の本で、手元に置いてじっくり眺めたくなる作品だと思い、すぐに連絡をしました。

 その当時、まなつ&まふゆさんはSNS上にはあまりテキストをアップしていなかったこともあり、最初はイラストをメインに、短いメッセージを添えた作品集のような企画を考えていました。その上で著者のお二人にお会いしたところ、作品についてのお話以外に、ご自身の考えや人生観についてお話してくださったのですが、それが『君がいるから』のメッセージにも通じるように、そっと寄り添ってくれるような優しさと思いやりにあふれていて、すごく素敵だったんです。著者のお二人も伝えたいメッセージがたくさんあると仰っていたので、メッセージの比重をあげて、イラストとメッセージの割合が半々くらいになるような構成にすることにしました。そして刊行したのが2023年の12月でした。

見ているだけで癒されるイラストだけではなく添えられたメッセージが人気に。
合わせて読むことでより心に響くと評判を呼んだこともロングセラーとなった理由の一つだ。

ーーイラストだけでなく、メッセージを添えたこともヒットの要因だと思います。編集する上でどういったことを意識されましたか。

渡邊:まなつ&まふゆさんから原稿をいただいてから、何度も打合せをして、言葉のニュアンスをひとつひとつ丁寧に確認しながらテキストをブラッシュアップしていきました。また、1冊を通して、優しく寄り添ってくれる章、力強く背中を押してくれる章など緩急をつけることを意識しました。

ーー書籍を読ませていただくと、ポジティブなメッセージが特に心に響きました。初版は何部からだったのでしょうか。

中島:6500部でした。弊社では、カラーであれば5000部以上が基本なので、特別に多いわけではありません。最初の重版は発売から3カ月後で、2000部を増刷しました。

ーーそうした中でじわじわと売れていき7万部を超えるベストセラーになっています。何かきっかけはあったのでしょうか。

中島:最初の転機は発売から1ヶ月後に新宿の紀伊國屋書店さんでパネル展を展開していただいたことです。本の中のイラストをパネルに印刷し、書店の通路脇にあるガラスケースで展示してもらったんです。書店の売り場で実際に作品を見せることで、読者の方に関心を持っていただくことができたと思います。新宿の紀伊國屋書店さんだけで1ヶ月で100冊以上売れました。

ーープロモーション戦略としては、やはり絵に力があるからということでパネル展を開催されたのでしょうか。

紙の質感がとても心地よく、パラパラとめくることによってこの書籍の優しさが身体に伝わるような感覚を与えてくれる。

中島:ジャンルとしては芸術書にあたるので、こちらから積極的にプロモーションをしなければ、刊行されたこと自体が伝わりにくいと感じていたんです。著者はSNSで影響力を持っている方ですが、だからこそネット書店だけで完結させるのではなく、リアル書店で紙として見てもらうことに意味があると思いました。

渡邊:こういったイラストブックは、やはり中身のイラストを見ていただいてこそだと思うので、広く人目につく場所でイラストを展示していただき、結果的に多くの方に見ていただけたのは本当にありがたかったです。紀伊國屋書店新宿本店さんでの売れ行き好調を受けて、じわじわとパネル展を実施してくださる書店さんが増えていき、結果的に全国各地に広がっていきました。

中島:著者のお二人はオリジナルグッズを制作しているので、池袋のジュンク堂書店さんではポップアップショップのような形で、本とグッズを一緒に販売してこれも盛況だったんです。その反響もあって、パネル展とあわせて書籍を展開してくださる書店が増えていきました。その結果、5000部、1万部の重版が何度も続くようになったんです。

渡邊:ポストカードや缶バッジなどのノベルティのプレゼントについても、書店員さんから店舗限定のノベルティを作りたいとご提案いただいたこともあります。最初は一部の店舗だけでしたが、最終的には自社で制作し、いろいろな書店さんで取り扱ってもらえるようになりました。

ノベルティのプレゼントとして制作された缶バッジ。

中島:そうした中で、熱心に応援してくださる書店さんも増えていきました。「この作品を推したい」と思ってくださる方々の輪が、少しずつ広がっていったように思います。

渡邊:書店員さんがSNSですごく可愛く飾り付けをしてくださっている店頭の写真とともに内容をおすすめするメッセージを投稿してくださることもあって、本当に嬉しかったですね。

ーー目利きの書店員さんたちが『君がいるから』を本気で推したいという思いが伝わってくるエピソードですね。メインターゲットは大人向けなのでしょうか。

渡邊:はい。しっかり描きこまれたイラストに加えて、たとえば〈大人だからって、痛くないわけじゃないよね。「みんな我慢してるから 自分も我慢するしかない」って思っていたんだね〉という一節のように優しくてメッセージ性のある文章は、人生を積み重ねた大人の方にこそ楽しんでいただけると思っています。

 また、購入してくださった方から「友人にプレゼントした」「娘にプレゼントした」という声もいただくようになりました。大切な人にプレゼントする、という需要もあるのだと知り、期間限定でプレゼントのリボンをイメージした限定帯も作成しました。

大切な人へのプレゼントとしてリボン付きのカバーデザインを作成。こちらも好評で部数を伸ばした。

――リアル書店とネット書店ではどちらで売れていますか。やはりリアル書店で実際に手に取って「紙の良さ」を感じたいという人が多いでしょうか。

渡邊:リアル書店のほうが売れ行きがいいですね。パネル展やグッズ販売などをしている時に、たまたま通りかかった方が手に取ってくださるというパターンも多いようです。

中島:売上の割合を見ると約9割が書店での販売です。現在はパネル展を全国で巡回しているので、さらに広がっていければと思っています。

ーー書店員さんからさまざまなお褒めの言葉があったかと思いますが、特に印象に残っている言葉はありますか。

中島:地方の書店で販売した際にも、書店員の方から「何回でも読み返したくなる」「そばに置いておきたい」といった感想をいただいたのはとても嬉しかったです。

通常版の装丁。イラストを邪魔しないキャッチコピーも秀逸で、大事な文言がしっかりと目に飛び込んでくる。

渡邊:帯には、『君がいるから』を全国で一番売ってくださっている、紀伊国屋書店熊本光の森店の担当者さんに推薦コメントをいただきました。新聞広告を出した際にも、同じコメントを使ったこともあったのか、九州での反応が特に良かったです。

ーー今、7万部ということで、さらなる展開が見えてきていますね。

中島:発売から1年半以上経っているんですが、実は今が一番売れています。こうやって地道に売上を伸ばしていくというのは、なかなか珍しいことだと思います。

渡邊:そうですね。私もこういうケースは初めてです。6月の売り上げは、発売初月の約5倍になっていました。パネル展やプレゼントブックとしての施策を通してそれが少しずつ全国各地に広がっていった結果だと思います。

ーー渡邊さんは普段どのような視点で情報をインプットし、企画に落とし込んでいるのでしょうか。

渡邊:『君がいるから』のようなイラストブックやコミックエッセイのような企画を考える場合は、主にSNSをチェックしています。一番に考えるのは、「本として手元に残して、何度も眺めたり、読み返したいと感じるかどうか」です。そして、私自身かわいいキャラクターや素敵なイラストに癒されて元気をもらってきたので、自分が本を編集する時も気持ちがほぐれたり、心が軽くなるような企画を出していきたいと思っています。

ーー中島さんは今後、どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか。

「『君がいるから』の続編『君といっしょに』が発売されます。ぜひお手に取ってみてください」

中島:大和書房の本を手に取ってくださる読者の方に向けて、しっかりと本の魅力を届けていくということに一層意識を向けていきたいなと思います。

『君がいるから』の続編が発売! 詳細は下記をチェック

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