ソローキンの新たな巨篇『ドクトル・ガーリン』 恒久的な戦争と伝染病に侵された近未来を描く
ウラジーミル・ソローキン著(松下隆志訳)『ドクトル・ガーリン』(河出書房新社)が8月27日に発売された。
【写真】『ドクトル・ガーリン』著者、ウラジーミル・ソローキン
国家が分裂し断片化した近未来世界。ウラジーミル(プーチン)、ドナルド(トランプ)、アンゲラ(メルケル)、シンゾー(アベ)など、“尻”のような異形の姿をした元G8首脳のクローン(pb=政治的存在)たち。様々な精神疾患を抱えている彼らを治療するサナトリウム院長ドクトル・ガーリンは、アルタイ共和国への核攻撃をきっかけに、彼らを引き連れて北へ向かうことを決意する。
旅の道中に現れる、身の丈3メートルを超すバイオ巨人、バービー人形のような女神を信奉する〈自由〉という名のアナーキストキャンプ、帝政期ロシアの貴族のように暮らす伯爵一族、カザフスタンから来る麻薬販売キャラバン、多種多様な人間的存在が登場する見世物サーカスなど。そして日常化する戦争。
戦禍に巻き込まれ、愛する人を失い、さらにはミュータントたちの収容所に囚われるガーリンは、過酷な環境の中であらゆる希望を失いそうになるが、アルビノの女性と、ひょんなことから入手していた「白いオオガラス」への崇拝を記した本によってそれらを乗り越える。そしてその先に待ち受ける物語のラストとは……。
■書誌情報
『ドクトル・ガーリン』
著者:ウラジーミル・ソローキン
訳者:松下隆志
価格:5,720円(税込)
発売日:2025年8月27日
出版社:河出書房新社