『地獄先生ぬ~べ~』今だったら懲戒処分? アニメでは再現困難な“平成感”あふれる原作エピソード
低すぎる消費税に時代の変化を痛感
平成と令和のギャップをもっとも強く感じるのは、第7話「はたもんばの呪いの巻(前編)」の冒頭に登場する「消費税率」の描写だ。
同シーンでは、克也が妹の愛美が欲しがっているゲームソフト「魔剣伝説」を購入するために家電量販店にやってくる。しかし克也は消費税がかかることを忘れていて、ソフトの価格とぴったり同額のお金しか持ってきておらず、困り果ててしまう。
この「魔剣伝説」の金額は、1万円に消費税が加算されて1万300円。すなわち当時の消費税率が3%だったことを意味している。消費税率が5%、8%を経て現在は10%になっていることを考えると、隔世の感があると言わざるを得ない。
なお、2006年には『地獄先生ぬ~べ~』の文庫版が発売されたが、同エピソードの消費税率は変更されず、連載版のまま収録されている。原作の真倉翔と作画の岡野剛は第1巻のあとがきでこのことに言及し、マンガは当時の流行や社会情勢を映し出す鏡なので、当時の雰囲気をそのまま伝えるためにあえて修正しなかったと語っていた。
さらにこの話についてもう少し掘り下げると、克也が消費税の存在を忘れるという描写自体にも時代性を感じられるだろう。日本で消費税が導入されたのは1989年なので、『地獄先生ぬ~べ~』が始まった当初にはそれほど時間が経っていなかった。うっかり忘れてしまう人がいるのも、それなりにリアリティがある描写だったのではないだろうか。
また「魔剣伝説」の1万円という価格設定が「高すぎる」と感じる人もいるかもしれないが、このことにもきちんとした理由がある。このソフトはスーパーファミコンならぬ“スーハミ”向けのゲームらしいのだが、スーパーファミコンは歴代ハードのなかでもソフトの平均価格が高かったことで有名。ロムカートリッジということもあり、製造コストが高かったからだ。
実際に「魔剣伝説」のパロディ元と思われる『聖剣伝説』は、シリーズ第2弾が1993年にスーパーファミコンで発売されており、その希望小売価格は9,800円(税抜)。さらに1995年に発売されたシリーズ第3弾は11,400円(税抜)という価格だった。
もっとも現代ではゲームソフトの価格が高騰しているので、一周回って違和感のない描写になっているとも言える。
ほかにも同作では『家なき子』でブレイク中だった安達祐実をモデルとしたキャラクターが出てきたり、美樹を始めとした小学生たちのお色気シーンが出てきたりと、“平成ならでは”の要素を無数に挙げることができる。
新作アニメではこうした部分も含めて、色々と配慮の行き届いた改変が行われているので、原作とどこが変わったのか見比べてみるのも楽しいのではないだろうか。