THE RAMPAGE・川村壱馬、「僕」と「俺」を使い分けた理由は? 自ら綴ったフォトエッセイ『PROMISE』インタビュー

本文とあとがき、あえて使い分けた「僕」と「俺」

――ある意味、“ブレない男・川村壱馬”らしいエピソードではありますが……(笑)。

川村:自分でもそれは実感しました(笑)。言いたいことが一貫してブレないなって。でも、せっかく書籍にするからには、似たり寄ったりの話ばかりにならないように、少しずつエピソードや方向性を変えながら書き上げましたね。

――そして、ブレない壱馬さんだからこそ、あとがきの一人称が「僕」なのに、本文の一人称が「俺」なのがすごく気になりました。

川村:そこは意識的に変えました。本文も読者に問いかけている部分もありますが、どちらかというと自分に言い聞かせている言葉なので、より口語に近い表現にしたんです。読者へ伝えることをあまり意識せずに、自問自答しながら自分の考えをまとめていったんです。

 でも「はじめに」と「おわりに」では、あくまでも“この本を読んでくれているあなたにお話しています”という丁寧な姿勢を見せたくて。あえて一人称を「僕」にしたり、読者の方に語り掛けるような表現で書きました。漫画でも小説でも、そういう構成ってよくあるじゃないですか? ストーリーは全然別物だけど、「はじめに」と「おわりに」は作者さんから丁寧に話しかけてもらってる感覚になりますよね。自分自身もいち読者としてその感覚を知っているので、それと同じ構成にしてみました。

――全て書き上げた後、少し時間を空けて読み返してみて、「やっぱり、この言い方はニュアンスを変えよう」とか「このエピソードは書かないほうがいいかも」と思うことはありましたか?

川村:一度書き上げてからはなかったですね。ただ、原稿用紙に手書きしてるから、誤字が結構あって(笑)。後半のほうまで書いてたのに、「うわっ、誤字っちゃった!」って、新しい紙に一から書き直すことが何度かありました。で、失敗した紙はクシャクシャに丸めて捨てるっていう。

インタビューでも、「自らの言葉で伝える」のを大事にしていることが伺えた。

――文豪みたい。

川村:あはははは。自分的には、訂正が一切ない完璧な状態で提出したかったので、最初はそういうふうにしてました。でも、あまりにも間違えるから「これ、斜線で訂正するとかでもいいんですか?」って編集さんに聞いたんですよ。そしたら「全然いいですよー!」って言われて、「いいんかい!」って(笑)。そこからはシャッシャッて斜線を入れて、横に正しい字を書き添えるっていう書き方に変えましたね。

一言一句、伝え漏らすことのないように

――例えば、「希う(こいねがう)」や「流言蜚語(りゅうげんひご)」などは日常生活であまり使わない言葉だと思うのですが、そういった表現はどこから?

川村:普段からラップのリリックを書いてるのが、影響したんじゃないですかね?ラップのリリックを書いてると、「こういうことを伝えたいけど、この言い回しなんやったっけ?」って思うことがあって、その表現を調べているうちに「こういう表現あるんや!」って知ったりするので。あとは、好きなアニメとかゲームからのインスピレーションもあります。文章を読むこともすごく好きで、日頃から言葉に対してアンテナを張っているので、そういったところから吸収した表現が出たんだと思います。

――文体は強気に言い切っている反面、括弧書きで余すところなく補足するところも、このエッセイの特徴ですね。

川村:僕、昔から誤解されやすい性格なんですよ。それこそ中学生の頃とか高校入りたての頃は、周りもヤンチャな人が多かったから、ちょっとした誤解で大事になったり、人と衝突することが多かったんです。大人になってからも、自分は何事も白黒つけたいタイプで、ハッキリ意見を言うから、誤解されることが多いですしね。だから、できるだけ誤解されないように、何か取りこぼしがないように……って、その都度言葉を尽くしてきて。それを続けてきた結果、括弧書きが増えました。

――細やかで丁寧な補足の奥に、「揚げ足をとらせないぞ!」という強い意志も感じたのは、私だけでしょうか……?

川村:おっしゃる通り! 揚げ足をとられてから、「いや、こういう意味だから」って訂正する労力がもったいないなって思うんですよね。だったら、最初から事細かに言っておくほうが自分に負担がないので、「ここまで言わないと、君にはわからないよな。ごめんな?最初から言っとくわ」って思いながら書いた部分もあります(笑)。

――本文にはTHE RAMPAGEのメンバーとのエピソードも出てきますが、メンバーの名前を明言していないのは、何か理由がありますか?

小道具として額縁を使用して撮影した。なんと"絵"になることか。

川村:書いている時は意識していなかったんですが、今振り返ると、自分の発言に注目してもらうためだったのかなって思います。誰々の話題が出てる!って盛り上がってもらうのも悪くはないんですけど、ここまでの書き物の中で、そのエッセンスがどこまで必要か?を考えた時に、名指しで細かく書く必要はないなって思ったんですよね。例えば「あ、このラジオのエピソードは海青と陣さんのことやな」とか、ファンの人がニヤリとするポイントが少し作れればいいのかなって。そうすれば、THE RAMPAGEのことをあまり知らない人が読んでくださった時でも、「メンバーの人がそう言ってくれたのね」ってふんわり理解できるだろうし。THE RAMPAGEの全員のメンバー名を把握していない人にとって、知らない名前が一切出てこないほうが親切かなって思いました。

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