『星を継ぐもの』シリーズの最終巻『ミネルヴァ計画』はマルチバースをどう描く?
ホーガンの小説はパズルのように複雑だ。異なる時間軸、交錯する現実と仮想、そして科学的理論に着想を得た設定が幾重に絡み合いながらも、最後には見事な論理で解き明かされる。ページをめくるたびに新たな謎が提示され、読者は「これは過去の話か?未来の話か?」と翻弄されながらも、次第にすべてがひとつに収束していく興奮を味わえる。
そこで展開される理論は非常に難解であるが、後半に描かれている物語は、4作目までに登場した独裁者ブローヒリオの野望を止めることで、ジェヴレン人と地球人が対立する原因となった過去を変えるという非常にわかりやすい歴史改変ストーリーである。
物語の軸となっていたのは、かつて破壊された惑星ミネルヴァの滅亡の真相であり、並行宇宙の謎、異星文明の思想、そして失われた歴史の真実だ。
テューリアンの社会学者ショウムが抱く疑問は、まさに本作の核心となる。テューリアンはそれまで地球人の暴力的な側面を恐れ、封じ込めようとしていたが「果たして、自分たちにも地球人のような権力の傲慢さが潜んでいるのではないか?」——慎重で理性的なテューリアン、そして攻撃的な一面を持ちながらも進歩を恐れない地球人。その対比が、異文化間の思考の違いを浮き彫りにし、読者に鋭い洞察を与える。
シリーズ全体を通じて、SFの醍醐味である科学的考察と壮大なストーリー展開が存分に楽しみながらも、『星を継ぐもの』シリーズの締めくくりとして一つの歴史を締めくくる。ファンならば必読の一冊だ。