【ライトノベル最新動向】「青春ブタ野郎」シリーズが10年目で完結! 「スパイ教室」新刊や「Re:ゼロ」短篇集も登場

 10月のライトノベルは、鴨志田一による『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』(電撃文庫)が10月10日に刊行されて、2014年から10年間続いてきたシリーズが完結を迎えることが話題となりそうだ。

 思春期の少年少女が心に抱くある種の妄想が、超常的な現象を引き起こす「思春期症候群」。それによって誰からも姿が見えなくなった女子高生で人気女優の桜島麻衣が、バニーガールの姿で街を歩いているところを1学年下の梓川咲太に見つけられてシリーズが始まった。麻衣と咲太が付き合うようになってからも様々な事件が続出。ひきこもり気味だった咲太の妹が外に出るまでになったり、過去と行き来して麻衣を事故死から救ったりしながら進んでいく。

 ここ最近は、「霧島透子」というネットで活躍しているシンガーの正体をめぐるエピソードが続いていたが、その正体が明らかになったと思ったら前作『青春ブタ野郎はガールフレンドの夢を見ない』で意外な方向へと進み、咲太の身に第1巻『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』と対になるような事態が起こる。完結編でどのような帰結を見せるのかに注目が集まる。

 人気シリーズでは、竹町『スパイ教室12 《万愚節》のエルナ』(ファンタジア文庫)が「スパイ教室」シリーズの本編として11ヶ月ぶりに登場。スパイになりたての少女たちがわちゃわちゃしながら難しい任務に挑む展開から漂っていた楽しげでスリリングな空気が次第に変化し、命が関わるハードな任務に少女スパイたちがそれぞれの全力を駆使して挑む、シリアスなスパイアクションへと進んできた。最新巻では、「暁闇計画」を巡る主人公たち「灯」の戦いが最終局面へと突入する。不幸なことを武器にしていたエルナはどう変わりどう戦うか。ファンが固唾を呑んで見守っている。10月19日発売。

 アニメ化も好評だった三河ごーすとのシリーズ最新巻『義妹生活12』(MF文庫J)と、10月からテレビシリーズの第3期が劇場上映も行われた90分拡大版の「劇場型悪意」を第1話として始まる長月達平のシリーズ最新巻『Re:ゼロから始める異世界生活 短編集11(MF文庫J)も10月25日にそろって刊行。アニメ2期が10月から始まる時雨沢恵一『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXIV ―インビテーション・フロム・ビービー―』(電撃文庫)も10月10日に登場と、アニメ化作品が幾つも並んでファンを誘う。


 新作では、『転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件』(スニーカー文庫)の雲雀湯が10月18日に刊行する『愛とか恋とか、くだらない。』(ガガガ文庫)がタイトルから不穏な印象を漂わせて関心を惹く。河合祐真という男子高校生が、親友の妹でお笹馴染の倉本涼香との間で結んだのは、「本当に好きな人」ができるまでの期限付きの恋人関係。それが展開の中でどう変わっていくかが読みどころになりそうだ。

 偽装恋愛では、10月10日発売の零真似『がらんどうイミテーションラヴァーズ』(電撃文庫)も興味を誘う設定。相馬という名の男子高校生を振った由衣という女子が付き合い始めたのが幸太郎。その幸太郎に振られたのが彩音という女子で、相馬と彩音は自分たちが幸太郎や由衣のようになれば改めて関心を持ってもらえると考え、口調やファッションや行動を真似はじめる。そうやって表面を真似ていった先に、幸太郎や由衣にはない魅力が相馬や彩音にはあることが分かってくる。人は外面にあらず内面にあるものだと教えられる作品だ。

 主人公にしか操縦できない兵器「スターゲイザー」を駆って、ひとりの少女が命を賭けて宇宙怪獣を倒し、世界を救ったものの怪獣は完全には撃退できていなかった。新たな戦いが始まろうとする中で、死んだ少女に変わって幼馴染みの少年が「スターゲイザー」に乗ることになるが、少年には操縦に必要な主人公性が足りていなかった。服部大河『はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。』(ファンタジア文庫)はそこから、主人公性を追求していく少年の面白くて困難な戦いが幕を開ける。勝負からは絶対に逃げないことや、操縦席で偶然女子とキスをすることが主人公性とか。読んで自分の主人公度を確かめてみるのも面白い。10月19日発売。

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