映画『復活の日』南極ロケの背景にはとんでもないエピソードが? 80年代邦画の知られざる背景に迫る一冊

 その他にもインタビューの随所から、映画や監督に対する的確な評と、映画が好きで好きでたまらないという気持ちが伝わってくる。だから、蔵原椎繕監督・倉本聴脚本・高倉健主演という鉄壁の盤石の布陣で挑みながら、日本映画を代表する失敗作となった『海へ See You』で、監督の無茶により生きるか死ぬかまでに追い詰められながらも、その映像表現の凄さに触れ、「クラさんを否定することは、僕が考えている映画の素晴らしさを否定する気がするんですよ」とい言い切ることができるのだろう。そして80年代は、まだこのような人物が映画製作に深くかかわることのできた、幸福な時代だったのだと、あらためて思ってしまうのである。

 その以外にも面白い話が山盛りなのだが、とてもではないが書き切れない。本書の冒頭で、昭和(1986年)のオヤジが令和(2024年)にタイムスリップするテレビドラマ『不適切にもほどがある!』が、SNSで話題になったことに触れられている。この番組で、80年代に興味を抱いた若者も多いのではないか。80年代を懐かしむ世代だけではなく、そんな若い世代も、本書を読んでほしい。そして取り上げられている映画を観て、80年代の元気な息吹を感じてほしいのである。

 なんて他人事みたいに薦めている場合ではない。私も当時はアイドル映画ということで敬遠していた吉川晃司主演の「民川裕司」三部作を観なくちゃ。だって本書を読むと、とっても面白そうなのだから。

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