『ザ・キンクス』『えをかくふたり』『オッドスピン』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 2月のおすすめ新刊漫画
『北北西に曇と往け(7)』入江亜季先生
北欧アイスランドで、とある特殊能力を活かし探偵稼業をしている少年・慧。そんなある日、弟・三知嵩の失踪をきっかけに、自分が知らない弟の“本当の姿”、そして不可解な事件に足を踏み入れていく。濃厚なミステリーものとして楽しめるのはもちろん、アイスランドの雄大な自然や食・暮らしの描写が圧巻で、まるで良質なロードムービーを見ているよう。
とにもかくにも毎巻“大満足”な作品である。最新巻7巻の舞台は、前巻に引き続き日本。日本に帰国した慧は、三知嵩の足取りを辿るべく、親友・清に協力してもらいながら聞き込み調査を始める。三知嵩の学生時代の友人、学校の教師、そして兄という立場で慧も清から質問を受けるのだが、この過程がとにかく面白い。質問を問いかけていくことで浮かび上がってくる、三知嵩の本当の姿。慧が初めて触れる、異質かつ恐ろしい三知嵩の姿に衝撃が止まらない。また、最後には新たな不穏な空気を感じる展開が待ち受けており、最新刊が発売されたばかりなのに早くも次巻が待ち遠しい。間違いなく今盛り上がり最高潮な作品だ。
『みちかとまり(2)』田島列島先生
竹やぶに生えていた不思議な少女・みちか。そんな彼女を見つけてしまった人間の少女・まりは「みちかを人間にするのか、神様にするのか」という選択権を委ねられたり、同級生であるいじめっ子の石崎からとても大事なものを奪ってしまったり..........。田舎街で平凡な日常を送っていたはずなのに、まりは人ならざる領域に足を踏み入れていくことになる。本作を一言で表現するとしたら、“民俗学オカルト神話ファンタジー”と言うのか、読み進めていくうちに「怖い」というよりも、「畏怖」を感じる展開が待ち受けている。また、
子供の純粋さ、無邪気な行動が呼び寄せてしまう怪異など、大人ではなく子供だからこそ物語が転がっていくようなジュブナイルホラーとしての面白さもある。2巻では、まりは小学生から中学生に成長し新たな章が幕を開ける。少しずつ大人になっていくまり。いつかこの物語を全て忘れてしまうのだろうかと、どことなく切なさが込み上げてくる一方で、田島列島作品名物「一度読んだら忘れない擬音語」の登場や新キャラの登場で思わず和んでしまった。