人気作家・有栖川有栖が被災地のファンに粋なプレゼント “燃えてしまったサイン本”の再現に感動広がる
電子漫画『わたしをあなたで甘くして』(原作:高野百加)で作画を担当する漫画家のポリーさんが2月14日、自身のXにて、人気推理小説家・有栖川有栖氏への感謝を伝えるポストを行い、感動を広げている。
ポリーさんは能登半島地震で被災し、厳しい状況の中でも現地の情報を伝えてきた。そんななか、2月5日に「避難所で、猛烈に活字が読みたいけど持ってた本全て燃えちゃった…と嘆いてたら同じ部屋の方が本を貸してくれた!有栖川有栖!!嬉しい!!」とポスト。スマートフォンばかり見ているとその情報量に気疲れしてしまい、紙の本を読むことがメンタルの安定につながっているという。被災地において、衣食住だけでなく趣味の分野でも、こうした支え合いがあるということを忘れてはいけないだろう。
ポリーさんが借りた本は『月光ゲーム』。有栖川有栖氏のデビュー長編で、『孤島パズル』『双頭の悪魔』『女王国の城』と続いていく「学生アリスシリーズ」の第1作だ。ポリーさんは元々有栖川作品のファンで、別のポストでは「そういえば県立図書館で有栖川有栖と竹本健治と麻耶雄嵩のトークショーがあって、その時に直筆サインもらったけどあれも燃えちゃったんだな…」と明かしていた。
この一連のポストが本人の目に入り、「ひとときでもお心に安らぎが届きますように」というメッセージが書かれたポストカードどともに、ポリーさんの元に有栖川氏の著作が送られてきたという。さらに、トークショーの際にもらったサイン本も再現して送られており、ポリーさんは「感激です。もう感謝しかありません。」と綴っている。
念のため留意しておきたいのは、「被災地に本を送ればよろこばれる」と安易に考えないことだ。公益社団法人「日本図書館協会」は1月11日、被災地、特に避難所に直接、本を送ることを避けるように呼びかけている。これは、阪神・淡路大震災や東日本大震災において、「置き場所」への苦慮や「読書ニーズ」のミスマッチなどが生じ、廃棄等、不要な労力が割かれる結果になったため。しかるべき場所への寄付が求められており、人気作家自身がピンポイントでニーズに応えた粋なプレゼントである今回の件は、当然ながらイレギュラーなことだ。
被災地支援にはさまざまな形があるが、こうした温かな交流が可視化されることは、SNSの美点と言えるかもしれない。有栖川氏の作品と同様に、ポリーさんの作品を楽しみにしているファンもいる。現在は連載を休載中とのことだが、早期に生活が落ち着き、創作活動が再開できるよう、被災地への継続的な支援を考えたい。