バスケ漫画の傑作『I’ll-アイル-』「完全版」が描いた“試合より大切なもの”と浅田弘幸の“作家性”

描き下ろしのエピソード「風の日」が伝えるもの

 さて、今回の「完全版」では、最終巻(第7巻)に描き下ろしの短編「風の日」が収録されている。

 描かれているのは、立花茜がある理由から仲間たちのもとを離れていた時期の物語だが、これがなんというか、読んでいてとても気持ちがよくなるエピソードだ。

 かつては誰よりも高く跳べた少年が、いまは跳べずにいる。しかし、「道の端しか歩けない人」たちの不自由さを知った時、“彼”は、ひと回り強くなれたのだ。

 そう、「花ひとつ咲いてねえ道なんて、つまんなくて歩けねーぜ」とは、立花茜の名台詞のひとつだが、「道」の端にも真ん中にも、それぞれの戦うべき“人生”はある、ということだろう。

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